2月30日〜11月8日


百合子の手を握りながら、当麻は非常に喜ばしい笑顔で街中を歩いていた。一方、百合子は恥ずかしいのか顔を俯かせている。

「上条……いい加減離せ………」

「えぇー?今の鈴科にはそんなこと言う権利ないだろ」

事の発端はちょっとした賭け。ミスター不幸体質な上条当麻とミス不幸体質な鈴科百合子、賭けにはお互い弱い二人で行い、結果上条当麻が勝利を収めたのだ。負けたらお願いを一つ叶えるという提案で当麻は「手を繋いで帰りたい」と言った。故に今の状況である。

「でもさ、こういう建前無しで鈴科と手を繋ぎたい。―――だって俺鈴科のこと好きだしさ」

無邪気に笑う当麻に、百合子は顔がぱあっと赤くなった。ストレートに好意を向けられるというのは苦手だ。しかしそれを知っていて当麻はやっている、性が悪い。

「………時々なら」

もはや照れ隠しにしかならないことを言って、百合子は握られた手を少し強く握り返した。その反応に当麻は満足したのか、やけに上機嫌で鼻歌なんか歌っている。

「じゃあまた明日な」

「あァ、また明日」

小さな約束と大きな約束をして、二人は家路を急ぐ。夕方特有の寂しさは薄れ、二人の心は温かかった。

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