《青黒♀で姉弟パロ(黒子大輝が似合わないため青峰大輝を貫いてます)》

青峰は少し複雑な家庭で生きている。別に虐待を受けているとかネグレクトを受けているとかではない。ただ青峰には姉がいて、その姉が再婚して出来た父親の娘なのだ。―――つまり連れ子である。ちなみに姉と言っても一歳しか変わらない。そして青峰の身長の方が断然高いので、知らない人間がみたら兄と妹、もしくは彼氏彼女にしか見えないのだ。

「テツ〜、今日母さん帰って来ないってさ」

「そうなんですか、お仕事大変なんですね」

「晩飯何にする?俺ハンバーグ食べたい」

「……挽き肉が無いです。買いに行ってきますから待ってて下さい」

「いや俺も一緒に行くから。テツ一人に行かせる訳ねぇじゃん」

青峰が部活帰りで疲れていても黒子を一人で買物に行かせるなどしない。それは黒子の影の薄さのせいで事故に遭ったりでもしたら心配だからだ。ナンパの心配は端からしていない、なにせ相手が黒子に気づかないのだから。それに黒子の細腕では袋を持つのは辛い。男である青峰がそこは手伝わなければ。

「大輝くん大きくなりましたね。180cm後半くらいですか?」

「ん?あぁ……確か190cmは超えてたと思う」

「………成長期恐るべしですね」

黒子の身長は女子にしては長身の168cmだから、青峰との身長差は25cmくらいだ。25cmも違うと黒子は青峰を見上げなければならない。そして反対に青峰は黒子を見下ろす形になる。バスケをするには素晴らしい体型であるが、このことに関しては青峰は自身の身長を呪った。黒子が青峰を見上げるのは良い。上目遣いは正義だからだ。しかし青峰は黒子の表情を見ることが出来ない。見下ろしたところで見えるのは黒子のつむじだ。

「テツ、手繋ごうぜ」

「甘えん坊ですね。はい、どうぞ」

黒子の表情を簡単に見ることは出来ないから、青峰は黒子の手をぎゅうっと握る。普段から黒子の体温は低めだ。その冷たさが今は何故か心地好かった。



《芸能人青峰とマネージャー黒子》

マルチタレントとして主にスポーツ関連で働く青峰のスケジュールは多忙だ。下手をすると分刻みで予定が入ったりする。そんなスケジュールを管理するマネージャーの黒子もまた忙しさに追われていた。青峰の人気故に黒子が売り込みにいく必要はない。むしろ黒子は青峰に舞い込む大量のオファーから、青峰にとってプラスになるものを選ばなければならない。そのオファーというものが多岐に渡るもので、黒子は毎晩頭を悩ましていた。

「テツ〜、バスケ関連の仕事ねぇの?」

「逆に今バスケ関連の仕事を候補から抜いているところです」

「は!?なんでバスケの仕事抜くんだよ!!」

「青峰くんバスケ云々で大人の事情として手加減とか出来ないでしょう。というかしたくないでしょう。だからわざわざ抜いてるんです」

「おぉ………」

黒子は桃井に次いで青峰をよく理解している。だから青峰がしたくないことを的確に外していく。青峰は芸能界で効率的に生きていける程器用な人間ではない。だからこそ黒子が青峰の生きやすいように周りを整えていかなければ。

「こんな優秀なマネージャー持って俺は幸せだな」

「当然です。誇ってくれて良いですよ」

くすりと黒子が笑う。どうやら仕事は一区切りついたようだ。青峰が片手を突き出すように出せば、黒子は少しきょとんとした後、にこりと笑って腕を差し出してきた。



《暴君青峰と委員長黒子♀》

「青峰くん、日誌がまだなので早く書いて下さい」

「あぁ?んなのあの女が勝手にやりゃいいじゃん」

「君がそんな態度だから彼女が君を怖がってしまうんです」

青峰はバスケ部エースと呼ばれているが、教室では立派な暴君である。彼に真っ向から反論や意見が出来る異性は桃井くらいだ。その対抗できる異性に最近委員長である黒子が追加された。男より男前と桃井から評価されている黒子には、青峰がちょっと駄々をこねる男の子としか見えていないからだ。

「とにかくこの部分に記入して下さい」

「感想とか特にねぇし。平和だった〜とかそんなんで良くね?」

「それで良いですから書いて下さい」

「面倒なんだって。委員長代わりに書いてくれよ」

黒子が日誌を青峰に押し付けても青峰は受け取ってくれない。机に置いて去ってしまえば良いのだが、真面目な気質の黒子は一方通行な放置的行動を良しとしなかった。だからわざわざ青峰と向き合って諭そうとしている。

「もう分かりました。君がそれを書いてくれるまで部活行っちゃダメにします」

「はぁっ!?部活とか関係無ぇじゃん!!」

「あります!日誌を書くという義務が出来なければバスケをするという権利は与えられません!」

「ふざけんな!んな横暴やってられっか!」

がたんと机を蹴り飛ばして青峰は立ち上がる。黒子は恐れずに青峰の目を見ていたが、青峰にとってそんなことどうでも良かった。恨みや不満の視線か投げ掛けられることくらいエースという身では日常茶飯事だ。

「青峰くん!」

「ごたごたうるせぇよ、黙れ」

黒子が戻るよう呼び掛けても青峰は意に介さず体育館へ向かった。



「良いのか」

今日のラッキーアイテムであろうリカちゃん人形の手入れをしながら、緑間が唐突に話をしだした。近くには青峰しかいないから青峰への話で間違いないだろう。

「あぁ?何だよ緑間」

「さっき職員室に行った時黒子が頭を下げていた。おおかたお前のせいだろう」

「なんで委員長が頭下げんだよ」

「……黒子には黙っていてくれと言われたのだがな。一時期お前の素行の悪さから、お前を部停にさせるという話が出たのだよ」

「は!?そんなのアリか!!」

「確かに横暴だとは思うのだよ。だがその話を、自分が何とかするから取り下げて欲しいと嘆願したのが黒子だ」

「………委員長が?」

「あぁ。アイツは……お前が誰よりもバスケが好きだということを理解していたのだろうな」

「………緑間、」

「俺に対して、ではないだろう?」

リカちゃん人形の手入れが終わったのか、緑間はリカちゃん人形を優しくベンチの上に置いた。金髪の髪はさらさらで綺麗だった。

「青峰、お前にこれをやろう。ラッキーアイテムの水鉄砲だ」

「水鉄砲って……ガキかよ俺は」

悪態をつきつつ、青峰は水鉄砲をぎゅっと握り締めた。水色の模様も何も無いその水鉄砲は、まるで無垢な彼女を連想するかのようで。青峰は部活中にも関わらず体育館から走り出していた。



××月××日
日誌記入者 ××/青峰

………
………………

日直の感想

委員長を困らせた。
明日謝りたいと思う。
あと……お礼も言いたい。



《神官と神子的な青黒パロディ》

白を基調とした簡素な服を纏う黒子は、明日からこの国を支える神子になる。神子というと普通は巫女という感じを想像するかもしれない。しかしこの国では神通力の力を女性がもって生まれたことが無かった。神通力を宿すのは神子を輩出する一族の長男のみである。そしてその神子を傍で支える神官の一族というものもあり、その一族の長男が神官に就任するのだ。

「青峰くん、とうとう僕も神子襲名ですよ」

「だったら少しぐらい緊張しろよ!」

「でも襲名したところで今までと変わりませんよ?ただ僕に会えるのが君だけになるだけです」

神子はとても神聖な存在だ。だから何人も簡単に会うことなど許されない。黒子の姿を、声を、様子を見ることが出来るのは神官である青峰だけなのだ。黒子にとって閉鎖的過ぎて鬱になるような環境だが血筋の問題なため文句は言えない。

「安心しろって。テツのことは俺が守るから」

「………そんな恥ずかしい台詞よく言えますね。………まぁ期待してます」

黒子の世界が闇に閉ざされようと、青峰は黒子にとっての唯一の光であることは変わらない。これから神子という立場で国に搾り取られていく黒子を守る唯一の力になりたいと、青峰は心の中で誓った。



《青黒》

「……夢を見ました」

「あぁ?テツが授業中寝るとか珍しいな。本の読みすぎで寝不足かよ」

心配するように青峰が黒子の表情を覗き見る。青峰の蒼々とした海のように深い目は、黒子を捕らえて離さない。黒子はその目に耐え切れなくなって思わず目を逸らしてしまった。驚いたのは青峰である。青峰が恥ずかしくて目を逸らすことはあっても、黒子が目を逸らすことは中々無いからだ。

「テツ?」

黒子の中で夢の内容がぐるぐる回っている。合わされなくなった拳や歩幅、気持ち……。その夢が現実になったらと思うと、黒子は体の震えが止まらなかった。

「なんだよ、怖い夢でも見たか?」

「青峰くん……」

「お化けなのかゾンビなのか知らねぇけど、そんなの俺が追っ払ってやるよ。俺様の前ではどんな奴も泣いて逃げてくんだぜ」

「………なんだか赤司くんみたいですね」

ぽんぽんと頭を撫でる青峰。身長や体格が立派だから青峰は恐持てに思われているが、笑った顔は年相応で幼い。そんな青峰が黒子を心配して明るいことを言ってくれているのだ。黒子の心が穏やかにならない筈が無かった。

「なんかあったら頼れよ、お前は俺の相棒なんだから」

そう言った青峰は爽やかで清々しくて、黒子はその眩しさに思わず目を閉じてしまった。

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