※時系列としては秀徳戦後です。大会の運営方式についての知識は皆無なため、お前wwwな展開です。誰得?俺得!な展開ですので、お気をつけ下さい。
黒子ちゃん女体化で誠凜マネージャー設定です。



試合の終了を告げるブザーが鳴り響く。日向の3Pが勝利点となって、誠凜は見事に秀徳を下した。未だに事態を飲み込めない観客席とベンチ。すぐさまそこは歓声に包まれることになる。大坪達三年生は悔しさに歯を噛み締めつつ、激戦に敬意を払うためにコート中央へ集まった。

「たまにはおは朝も外れるって」

「五月蝿い黙れ」

高尾の労いを一蹴して緑間は誠凜のベンチを見た。淡い水色の彼女はボードで表情を隠している。しかし肩が小刻みに震えていることから、きっと涙を流しているのだろう。キセキの世代を倒したいと宣言した彼女は、見事に言ったことを達成した。それはきっと想いの強さ故なのだ。たとえマネージャーとして見守ることしか出来ない立場だとしても、彼女の意志は常にプレイヤーと同じ前線にあった。

「真ちゃん?」

「………俺も腹を括らねばな」

彼女はもう元帝光バスケ部マネージャーではない、誠凜バスケ部マネージャーだ。それを緑間は認めたくなかった。緑間にとって彼女は他と一線を画した存在で、それは今も昔もこれからも変わらない。ただ想いは変わらなくても変わってしまうものはある。

「真ちゃん行こうぜ。ミーティングだ」

「先に行っていろ。……俺にはやるべきことがあるのだよ」

緑間の歩は秀徳ではなく誠凜に向かう。それに一番早く気づいたのは火神だ。警戒した顔つきになる火神だが、緑間は気にも留めずに目的へ向かった。

「……黒子」

「っ!………はい、何でしょう」

赤く腫れている目をごしごしと擦りながら答えを返す。いつもなら悪癖が出てしまうが、それをぐっと堪えて、緑間は持っていたボールを黒子へ差し出した。訳が分からないからか、黒子は目をぱちくりと瞬きをする。緑間は足りない言葉を補うように言葉を紡いだ。

「これで最後で構わない。俺に―――もう一度パスをくれないか?」

緑間の申し出に誠凜秀徳両者が凍りつく。いくら同中とはいえ今は敵だ。しかも少し前まで試合をしていて、結果緑間の属する秀徳は負けている。どう考えても有り得ない台詞だった。

「お前何考えて――」

「いいですよ」

「って黒子!」

さすがにと思い日向が口を出す。しかし黒子の真剣な顔を見て、日向は諦めざるをえなかった。それに黒子は軽はずみな行動はしない。まだ共に過ごした日は浅いが、それくらいは理解しているつもりだ。

「一球だけならお付き合いします」

「……ありがとう」

この一球は緑間を変える一球だと、黒子はそう思っている。でなければ、この状況でパスを出そうなどとは思わない。帝光とキセキから抜け出すべきなのだ。そのための一球、とても大切な一球。

「俺はハーフラインに立つ。お前は……」

「わざわざ言わなくても分かりますよ」

お互いがお互いのポジションにつく。観客は誰も席を立たず、全員がこの光景を見つめていた。もちろん両校もだ。

「いきます」

黒子が出したボールは綺麗に平行を保って緑間へ向かう。その間緑間は黒子もボールも見ていなかった。なぜなら見る必要がないからだ。黒子が放ったボールは百発百中欲しいところに来る。それは相も変わらずで、放たれたボールはちょうど緑間の手に収まった。

(うわリリース短っ!)

共に練習している高尾には如実に分かる。緑間はボールを受けとった際に持ちやすいようにボールを持ち替えている。それはシューターとしてベストなボールを打つためだ。百発百中のボールを打つ緑間には必要な作業だった。しかし黒子が出したボールを受けとった緑間はそのまま投げている。つまり持ち替える必要が無いという意味だろう。

(我ながら浅ましいけど嫉妬しちゃうね)

緑間のシュートを最大限活かせているのは現状高尾よりも黒子だろう。付き合ってきた年月で済ませられるほど高尾は大人じゃない。緑間の相棒を自負しているからこそ、最大の力を引き出せない自分に腹が立った。

「うわっ」

宮地が思わず声を上げる。それほどまでに美しい放物線を描いて、ボールは見事にネットをくぐった。途端に上がる歓声に黒子の肩が跳ねる。その様子に少しおかしくなって、緑間はくすりと笑った。そして手の平を見つめる。改めて感じてしまった、もうこのパスを貰えないのだと。同時に過去という鎖が消え去ったのだと。

「……黒子」

歓声が収まる頃合いに緑間が黒子に声を掛ける。黒子はどこか誇らしげな笑みを浮かべて緑間を見た。その黒子の表情を見て、言葉は自ずから漏れ出た。

「黒子、好きだ」

「……えっ?」

「好きだよ黒子。今も昔も―――これからも」

優しい声で緑間は想いを告げる。悪癖のツンデレは姿を隠してくれていた。直球ストレートな言葉に意味を違えることはない。緑間の言葉を余すことなく理解した黒子は、次の瞬間沸騰したかのように赤くなった。元が白く透き通った肌だからか違いが顕著に出る。

「み……緑間くん……」

「返事はいらない。ただ伝えたかった、それだけだ」

黒子の横を通り秀徳の元へ合流する。後に質問攻めに遭うのは予想済みだ。それは黒子もきっと同じだろう。自分のことで頭がいっぱいになれば良いのにと、珍しく欲望に忠実なことを緑間は考えた。



WCに向けた練習で相変わらず秀徳の練習はハードだ。幸いと言うべきか緑間の家は秀徳からそんなに遠くはない。部活後に長い道のりを帰る人は大変だなと他人事のように考えた。

「あっ緑間くん」

………幻聴が聞こえる程に疲れていたようだ。秀徳と誠凜はかなりの距離がある。当然黒子の帰宅路と緑間の帰宅路が重なることはない。

「緑間くん」

「……本物か?」

「なんですかその返しは。馬鹿にしてます?」

「いや……」

誠凜の制服を着た黒子が家の前にいるという、ありえない光景が目の前に広がっている。黒子がいる理由が一つしかないため、逃げることも出来ない。

「返事をしに来ました」

「……いらないと言ったのだよ」

「言い逃げはずるいですよ。僕の答えも聞いて下さい。そういうのを告白というのでしょう?」

男前すぎる黒子に思わず溜め息をついてしまう。格好をつけて終わりたいという高校男子の想いは、黒子の前では無様に砕け散る。黒子の言うことが正しいのだが、やはりいたたまれない気持ちになった。

「分かった。お前の気持ちを聞かせてくれ」

「単刀直入に言います。僕も緑間くんのことずっと好きですよ」

「………は?」

「なんですかその反応は」

黒子の答えの解釈が正しければ、黒子も緑間のことを好いているとのこと。いや、それ以外の意味には取れないのだけど。しかも黒子の言葉から考えると現在進行形である。つまり高校に入った今でも想ってくれているということだ。

「緑間くん、不器用でお手数掛けますけど、僕とお付き合いしてくれませんか?」

その問いの答えを返される前に黒子の体が何かに抱き込まれる。その温かさに、黒子は体も心も全てを預けたくなった。

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