とある休日の昼下がり、一方通行と番外個体は黄泉川から買い物を頼まれていた。なんてことはない、ただの日常用品の買い出しだ。しかしいつも一方通行とセットでいる打ち止めは、今日はインデックスと遊ぶとかで席を外していた。子供二人の子守をしなければいけない当麻には申し訳無い気持ちである。仮に打ち止めがいれば一方通行と打ち止めで買い物に行かされただろう。しかし彼女が不在のため番外個体に白羽の矢が立ち、結果二人は賑やかなショッピングセンターの中を歩いていた。

「ねぇ疲れたんだけど。お腹も空いたし何か食べようよ〜」

「買い物終えてとっとと帰るに越したことは無ェ」

「いやいや、せっかく来たんだし遊ぼうよ」

真面目と言えば格好良いかもしれないが、単に一方通行は融通が利かないだけだと番外個体は思っている。珍しく打ち止めが不在の二人きりで番外個体のテンションは最高潮なのだ。打ち止めがいると一方通行の意識はそちらに行ってしまう。番外個体はそれが不満だった。大人気ないと言われても気にならない。

「ねぇ〜」

「……チッ、分かった。ただし長居はしねェからな」

「アイス食べたいな、確か此処に美味しい店があるんだって」

一方通行に少し身を寄せ甘い声で話す。生憎と色仕掛けに掛かってくれる相手ではないのだが、それでも女の武器は最大限使うべきだ。妹達や美琴とは異なる膨らみを押し付けるように腕を絡めば、一方通行は少し眉間を寄せて困ったような顔をした。外部からの刺激を遮断して生きてきた一方通行はホルモンバランスが狂っているのか、そういうものに淡白な気質である。そんな彼が番外個体の行動に気持ちが少し揺れた、それだけで番外個体は少し嬉しかった。

「………お前、そォいうことを平気な顔でするンじゃねェよ」

「そういうこと?ミサカははぐれないようにくっついてるだけだけど」

企みが成功したという顔でにやりと笑えば、一方通行は少し息を吐いた。溜め息じゃない分良い方である。しかし次の瞬間、一方通行が力を込めて番外個体の腕を振り解いた。一方通行がこういう馴れ合いをあまり好まないのは番外個体ももちろん知っている。しかしそれでもいきなりの行動に、番外個体の中に少し怒りが湧いた。

(今の振り解き方…、まるでミサカのこと嫌いみたいじゃん)

学園都市に番外個体が来てかなりの時間が経つ。打ち止めのようには接してくれないにしても、最近の関係は以前に比べてかなり良くなった。それこそ二人で買い物に行く時に文句を言わなくなるくらいには。だからこそ一方通行の行動は番外個体にとってショックだった。

「ったく、何暗い顔してンだよ。はぐれたくないならこうすれば良いだろ」

杖をついていない一方通行の左手が、袋を持っていない番外個体の右手に触れる。手を握るというよりも手首に手が添えられている感触だ。それでも番外個体にとっては紛れも無い"手を繋ぐ"という行為だった。恐らく一方通行も手を繋いでいると認識しているに違いない。そして番外個体は繋がれた手を一度離してから再び繋ぎ直した。もちろん指を絡めて。

「ミサカは方向音痴だからね、こうでもしないと迷っちゃうの」

「……勝手にしろ」

ぶっきらぼうに言うものの拒絶するような素振りは見せない。そのことに内心安堵した番外個体は、絡めた手に少し力を込めた。隣で一方通行が少し息を呑む。そのあとに握られた手に少し力が込められたのを感じて、番外個体は頭をちょこんと一方通行の肩に寄せた。





「よくそンな甘いのが食えるな」

「女の子だもん。甘いものは別腹って言うでしょ」

「俺には一緒理解出来ない言葉だ」

「つれないねぇ〜」

期間限定という言葉に釣られて番外個体が買ったのは、チョコアイスの上にカラフルなトッピングとトリュフチョコが乗っているアイスだ。とにかくチョコを乗せたもので値段もそれなりである。しかし一方通行がいれば値段など無いようなもの。一方、一方通行はアイスの店で何故かコーヒーを頼んだ。缶コーヒーよりかは美味しいようで少し満足げである。

「おい、垂れてンぞ」

「えっ、嘘!」

室内で空調はきちんと効いているが、人が多いからか若干暑い。アイスも時間が経つにつれて溶けていき、もうすぐでコーンを伝って落ちそうだ。早く食べようとペースは早まるがアイスもどんどん溶けていく。見かねた一方通行は番外個体の手を掴んで垂れていたアイスをぱくりと口に含んだ。溶けた部分が無くなったからか垂れるのを一時期に阻止出来ている。甘ったるさが口に残るが一口だからか我慢出来そうだ。

「ちょっ、」

「あァ?こンぐらいでギャーギャー言うんじゃねェよ全く……」

「いや、だって………えぇー!?」

そんなワイルドな解決策を取られると思っていなかったので、恥ずかしさで番外個体の顔が赤くなる。負の感情の影響が大きく出る番外個体の筈なのだが、"恥ずかしくて赤面する"という反応は生き残っていたらしい。一方通行はそんなこと気にする様子も無いが、それでも番外個体の脳内はお花畑が展開されていた。

「百面相しやがって、女ってホント分かんねェ」

無自覚無意識ボーイはあたふたする番外個体を片目に見て、コーヒーを啜った。少し温くなってしまっていたが、それでもコーヒーは美味しい。隣であたふたしている彼女がどうしたら大人しくしてくれるか考えながら、一方通行は最終兵器を使おうかちらりと思案した。

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