「困ったなぁ……」

山のような書類の前で、帝光中生徒会長である福島は頭を悩ませていた。もうすぐ帝光中の文化祭が始まるのだが、一つ問題が発生したのだ。

「会計〜、今回掛かった経費っていくらだっけ?」

「赤字ではないですが黒字でもないですね」

「うちの文化祭は無駄に豪華ですけど、見合った利益が取れないからねえ」

帝光中文化祭の特徴は、中学の文化祭の癖に営利目的なことにある。その分装飾などにお金が掛かってしまうのだが。

「第一うちはバスケ部の予算がおかしいんですよ」

「そこを文化祭費に回してくれれば……」

「そのくせ文化祭でバスケ部は活躍してくれないし」

帝光中バスケ部といえば華だが、実態はかなり苦しかったりする。バスケ部の活躍の裏には生徒会などの雑務が折り重なっているのだ。部費の増額を願う部は多々あるがバスケ部の前では無力でしかない。

「こうなったら、金食いバスケ部にも活躍してもらおうじゃないの……」

会計がきょとんとした顔をしているなか、福島はとある計画を立てていた。




「みんな集合!!」

リコの一言で全員が集まる。リコの隣には少しおどおどした福島が立っていた。帝光中の制服を見て全員がちらりと黒子を見る。

「彼女は今の帝光中の生徒会長さんよ」

「初めまして、福島小百合と申します」

「あーどうも。……で、もしかして黒子に用だったりする?」

「黒子先輩にも誠凜の先輩方にもです」

「………一体何の用でしょう?」

福島はスクールバッグから一枚の紙を取り出した。そこには帝光中文化祭のお知らせと書いてある。

「近々帝光中文化祭があるのをご存知でしょうか?」

「まぁ知ってるけど…」

「その文化祭で今年こういうのを設けました。先輩方も時間が合いましたら是非いらして下さい」

紙を読んでいけば真ん中に大きな文字で何か書かれている。日向がそれを声に出して読んだ。

『キセキの世代と一戦交えてみませんか?』

「…………」

全員の沈黙が重なる。黒子も驚きで声が出ない。確かに彼らが高校生になった今、キセキの世代に挑むことは出来ない。彼らも同じコートに立つことなど想像すらしていないだろう。

「一応聞きますけど、みんなに許可は取ったんですか?」

「それに関しては問題ありません。ただ五人とも黒子先輩のエントリーを条件に出しましたので、今日は先輩のエントリーを貰いに来たんです」

「日にち的には大丈夫ですけど……」

「黒子くん、エントリーしなさい」

面白そうといった目でリコが黒子を見る。今となっては伝説のキセキの世代のプレイが見れるのだ。リコやその他の人間のテンションが上がらない筈がない。

「―――分かりました、参加します」

「あっ、ありがとうございますっ!」

ぺこりと頭を下げる福島。その顔が笑っていたことに気づいたものはいなかった。





文化祭当日、キセキの世代と対決出来るとあって来場者は例年の倍以上だ。元々広いほうではある学校が人で溢れかえっている。

「にしてもあの会長ちゃんやるわね……」

紙を見た時はキセキの世代と戦えるという文字しか見えていなかったが、よく見れば参加資格がいくつか書いてある。まず一つ目、参加者が中学生以上であること。これはキセキの世代の体躯を考えてのことだろう。そして二つ目が文化祭内の飲食物を五百円以上の購入だ。要はお金を払って参加資格を買えということ。ただお金で参加資格を買うとなると問題だが、飲食物を買えば参加資格を貰えるだから合法である。しかもチーム換算ではなく個人換算だったため五人で二千五百円、上手い商売だ。

「さて、とっとと食べて参加資格を貰いますか」

日向率いる誠凜チームは参加資格を得るために露店を目指した。




「まさかまた同じコートに立つとは思わなかったっスよ〜」

「見せ物のような扱いには腹が立つのだよ。福島の奴………」

「福島?誰だソイツ」

「真太郎は生徒会に入っていたからね、今の会長と面識があるんだよ」

「やっぱりまいう棒最高だよね〜」

「とりあえず聞かせて下さい。どうして僕を巻き込んだんですか?」

「巻き込んだなんて酷いな。キセキの世代に召集が掛かったんだ、テツヤを呼ぶのは当然だろう?」

「僕はキセキの世代ではありません」

「テツがどう言おうと俺らの評価は変わらねぇよ」

「黒ちんのパス久しぶりだから楽しみだな〜」

「スリーポイントシュートの方が効率が良いに決まっている」

「緑間っち、さりげなく抜け駆けは許さないっス」

「お前ら何言ってんだよ。テツの光は俺だけだ」

「分かりましたから。みんなに今日はきちんとパスします。だからそんなくだらないことで喧嘩しないで下さい」

「僕らにとってはくだらなくなんか無いけどね」

「時間です。スタンバイお願いします」

案内係から召集の声が掛かる。黒子以外の五人は立ち上がり、円になるように並んだ。

「じゃあ、いくよ」

じゃんけんという赤司の声に続いて四人が手を出す。見事に四対一に分かれ、一になった黄瀬はその場に崩れ落ちた。

「はい、スタメン決定。じゃあ涼太はベンチスタートね」

「黒子っちぃぃぃ!」

「すぐに交代しますから安心して下さい」

「いや黒子っちと交代じゃ意味無いんスよ………」

帝光中体育館、たくさんのギャラリーに囲まれて五人はコートに立つ。対する高校生に向かって赤司は絶対宣言を言い放った。

「さぁ、試合をはじめようか」

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