気がついたら口が動いていた、カイトと。乱雑に髪を纏めている少年は、分からないが自分にとって大切だった。何故忘れていたんだろう、カイトをあれだけ求めていたのに。
「カイト、カイトだ………」
腰を浮かせて思わず抱き着いてしまう。カイトは最初驚いていたが、徐々に顔を青くしていった。
「ルーク頼むから離してくれ。みんなの目が痛い」
「別に二人で仲良くしてればいいじゃん。ノノハ、今日は買い物に行こう?」
「良いよ〜。カイトはルーク君と色々話すこととかあるでしょ」
「アナも行きたい行きたい!」
「私もご一緒したいですね」
「俺も行くぜ。野郎だけじゃ心配だからな」
「ギャモン君も男の子じゃん!」
楽しそうに繰り広げられる会話に入れないからか、カイトは涙目だ。せっかくノノハが休みだから出掛けようと誘おうとしていたのに。ルークが嫌いな訳ではないがタイミングが悪すぎた。
「ルーク、話は後でな。今日は外せない用事があるんだ」
「彼女、君のことなんて気にも留めてないけど。それよりカイト、たくさん話しようよ。言いたいことがたくさんあるんだ。あとビショップ、なんでそいつらと仲良いの?」
「ルーク様、私は前世に囚われませんから。今は彼らと楽しくパズル制作してます」
「地堂刹ってね、私達を総称しての名前なんだよ」
はにかんだノノハにアナが抱き着く。それが羨ましいのかキュービックも抱き着く。ギャモンとビショップはさすがに抱き着いたらセクハラなので、体を震わせながら我慢していた。カイトも羨ましそうな目で見ている。
「そうだっ!ルーク君も地堂刹の一員にしたらどうかな?」
「却下。そいつノノハのこと嫌いだぜ」
「アナも賛成しないなぁ。敵増やしたくないし」
「でもルークが入ったら地堂刹としては利益だよね?」
「私はどちらでも構いませんよ」
「カイトはどう?」
「俺は別に良いけど」
「カイト、気をつけてね。いつ食われるか分からないよ」
「キュービック!そんな不吉なこと言うなよ!」
「気をつけて下さいね」
「アンタもかよ…」
前では考えられないような会話だ。まずビショップは完全にルーク側で、彼らと馴れ合うなんてことは無かった。もちろんルークもそれを許さなかったのもあるが。
「ルーク君。私は前について何も言わないよ。だってそれは今のルーク君とは関係無いもの。だからルーク君が自分で道を決めてね」
前はとにかく彼女が嫌いだった。無力のくせにカイトに纏わり付く、目障りな存在。完全なカイトに成るために邪魔な存在だった。
だが今はどうだ?彼女はムカつく委員長だ。そう、ただそれだけ。それ以外何も有りはしないのだ。
「僕は―――」
「地堂刹のパズル、また面白くなったよね」
「解き方とか見てなるほど!ってすごく感動したもん」
「どんな人が作ってるのかなぁ?」
「すごい人に決まってんじゃん!」