※転生ネタ
ファイブレは割と現実ちっくなネタが多かった筈なんだが(笑)
最近夢を見る。いやもちろん人は夢を見る生き物だけど。(色々な意味で)毎日のように同じ夢を、毎回終わりの違う夢を。そこにはタンクトップの男や自分に仕える男、挑戦的な目の赤髪の男など様々な人間が出てくる。もちろん会ったことなどなく赤の他人であったが、何故か無性に懐かしいと思うのだ。まるで本当に会ったことがあるみたいに。
「………疲れてるんだろうな」
昨日は面白いパズルを見つけてついつい夜更かししてしまった。やはり地堂刹のパズルは面白い。まだ若いらしい…もしかしたら自分と同じくらいかもしれないと思いを巡らす。なんにせよきっと知的で素晴らしい人間に違いない。
「…学校行かないと」
親が死別して二年になるが、未だに少し慣れていない。時々寝過ごして欠席してしまったりもする。
「学級委員長、五月蝿いからな」
サボりだとバレた瞬間の委員長の顔を、ルークは今でも覚えている。あれは鬼だ、鬼としか言いようが無い。少なくとも関節技を決めた彼女を自分が恐れない日はきっと来ないだろう。思い出すだけで痛みが再発しそうだ。
「あっ忘れ物」
小さなパズルを鞄に入れて急いで家を出る。同じ制服の人間を見ないということは、相当な時間に違いない。携帯を部屋に忘れてしまったため時間の確認が出来ないのだ。
「あっ、ルーク君じゃない」
恐怖の元凶、もとい学級委員長が走ってこちらに来る。やめろ来るなと言いたいが口が開かない。
「ルーク君、制服でどこにいくの?」
「えっ、いや学校…」
よく見ればノノハは私服だ。………何故?だって今日は平日だ。
「あっ、もしかして開校記念日忘れてた?」
「開校記念日……」
確かアレだ。どの学校にもある記念日だ。特に開校に感謝などしていないが平日休めてラッキーな日だ。
「ルーク君おっちょこちょいだね。意外だなぁ、クールなイメージだったから」
「………君はこれから何をするんだ?」
「ん?あぁパズルを見に行くんだ」
「パズル?」
ルークの記憶に、委員長がパズルを得意としているなんて項目は無かった。いや、確か頭を使うパズルは苦手だとかなんとか。
「地堂刹って知ってる?その人のところ行くんだ〜」
「地堂刹!?あの有名な地堂刹!?」
「えっ、すごい人なんだ………」
この女は何を言っているんだ。………いや、今彼女は地堂刹と知り合いだと言った。つまり、彼女に付いて行けば地堂刹に会える。このチャンスを生かさない訳が無い。
「委員長、その人に会いたいんだが」
「地堂刹に?いいよ、ちょっと待って連絡するからね」
親しい間柄のような、慣れたやり取りに関係を聞きたくなる。もしかして身内かもしれない。地堂刹なんて当然ペンネームだ。………もしかして恋人かもしれないが。
「良いってさ。ただ実名伏せて顔出ししてないから、その辺は配慮してね」
「当然だろう」
委員長の数歩後ろを歩きながら、ルークは道筋をきっちり覚えていた。これで繋がりを持てれば、もしかしたらまた会えるかもしれない。そうなったら幸せで死ねるだろう。
「ここだよ」
連れて来てもらった場所は、何処にでもあるような普通のマンション。ここが仕事場なのだろう。委員長は鍵を取り出してロックを解除し、慣れた足で部屋を目指す。
「ギャモンくーん、開けて開けて!」
「おぉ久しぶりだなぁノノハ。あぁ、そいつ例の奴か?」
「うん、彼パズルすごく得意なんだよ。にしてもギャモン君、地堂刹って有名なんだねびっくりしちゃった」
「まぁ大したことじゃねェよ」
入室を促され部屋に入ると、とても広いリビングに人が集まっていた。
「お客さん?誰々?」
「ノノハおはよう!アナ、初対面の人にはきちんと挨拶しないと。はじめまして、キュービックです」
「おはようノノハ、アナだよ〜」
「おはようございますノノハさん。お茶煎れましたよ」
白衣の少年に女性のような顔立ちの人、スーツをきっちり着込んだ男がリビングで机を囲んでいる。
「えっ、天才研究者と世界的画家と……誰だ?」
「ビショップさんはPOGのお偉いさんなんだよ」
後ろから説明を加えてノノハがソファに座る。POGというのは世界規模で有名な大手メーカーだ。若手で大変優秀な人間が上にいるとは聞いていたが、まさか彼だとは。いや、それ以前に此処にいる面子はおかしい。
「ねぇルーク、ルークはアナ達を知らない?」
「ニュースとかで…」
「そうじゃなくて、もっと根源的に知っているでしょ?」
アナがルークの夢を知っている筈が無い。しかしアナの口ぶりには確信がある。全てを知っているような、そんな含みがある。
「アナ、誰もが思い出す訳じゃないよ。ビショップさんだって一週間位前だったし」
「思い出す……」
あの夢を見たい。きちんとした形で見たい。そうしたら何か答えが見つかるかもしれない。ただ頭の何処か片隅で、全てを否定する自分がいた。
「ルーク様、貴方はもう貴方ではありません。ですから、もう自分をもって生きて下さい」
どうして彼は敬語なのか、どうして彼は自分を案じているのか、分からない分からない分からない。ただ、自分と彼らは何処かで繋がっていた気がする。
「おいギャモン、もう出来てんだろうな」
唐突に聞こえた声に、ルークの視界は鮮明に色を映し出した。
続きます→→