全ての分野において絶対なる壁をもつ彼女は、まさに天才。いや、むしろチート少女だった。たった一人の少年が唯一の対抗手段であったが、彼でさえも十分ではなく。それゆえに孤高の存在、絶対君主のように彼女は頂点に立っていた。




「ふゥン、ハッキングねェ………」

目の前には一見何処にでもあるようなパソコン。百合子の今回の任務はハッキングで人身売買のデータを摘発することだった。本来ならハッキングは犯罪だが、見つからない自信がある。また扱うデータがデータなだけあって身の安全が危ういが、百合子にそのような心配をするだけ無駄だ。

パソコンを普通に操作をする振りをしながら、第三位の能力『超電磁砲』を使って潜り潜っていく。風紀委員が側を通ったりもするが怪しい動きはしていないので気がつかない。風紀委員のサーバーにハッキングしても気づかれない自信もある。

「………あった」

目当ての情報をすぐにUSBメモリーにコピーしていく。その際情報に百合子自身が目を通すことも忘れない。仮にUSBメモリーが駄目になった場合の保険だ。この程度なら一字一句間違えず正確に覚えきれる。

仕事が終わればすぐに立ち去る。店を出た際に、不意に感じた視線に百合子はすぐに路地裏に入った。すると湧き出るように出てきた不良達、いわゆる武装集団だろう。ハッキングという精密作業をやった後で休みたいのに面倒だと内心思いつつ、体は交戦状態に入っていた。久しぶりだからか、体が少し鈍っている感触がする。

基本的には反射、それで面倒臭くなれば軽く応戦。相手に少し触れるだけで好きなだけダメージを与えられるのだから、『一方通行』はとても便利だ。いや、この場合はベクトル操作が便利だと言うべきか。気がつけば相手は戦意喪失したのか逃げ出してしまった。全くもってつまらない。

時計を見れば約束の時間がかなり迫っていた。ベクトル操作で急げば良いのだが、それはそれで何だか面倒臭い。すると近くに見知った感覚がする。間違いない、これは移動能力者のものだ。事実遠くに風紀委員の白井黒子がいた。これだけの距離があれば大丈夫だろう。百合子は『瞬間移動』でその場を後にした。



「は?私の能力が何か?」

「いやさ、鈴科のその能力…正直よく分かんなくて。えっと確か……多重能力だっけか?」

「別に難しい能力じゃねェよ。まァ色々制約は付くが、要は能力が一つじゃないってこと」

「まさに学園都市第一位だな〜」

「学園都市第一位も色々大変だぜ?」

「俺の幻想殺しもたくさん能力あるんじゃ効果無いしな」

学園都市第一位、通称チート少女は今日も元気に学園都市の闇を晴らすために動いている。

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