カイトの両親が偽りだったと分かってから、何故だかカイトは昔のアルバムを探し始めた。たとえ偽りだとしても彼らはカイトを愛して育てていた。その証として、カイトの家には写真がたくさんある。それらに触れることで、愛情を再確認したかったのかもしれない。
押し入れを少し探せばあるのは段ボール。そこに今は亡き両親達との思い出がある。丁寧に開ければ埃をあまり被っていないアルバムが、そこにはあった。淡い青の表紙に、母が書いたであろう文字。全ての写真に一言ずつコメントが添えてある。その愛情に、カイトは心の中で涙を零した。
「カイト、入るよ〜」
掃除がしやすい格好でと、ラフな格好をしたノノハが部屋に入って来る。カイトの手の中にあるアルバムを見て、ノノハは思わず涙ぐんだ。
「カイトのお父さんとお母さん、ホントに優しかったよね」
「………あぁ、自慢の両親だよ」
その言葉の裏にある悲しみをノノハに見せないように、少しでもと明るい声を出そうとする。しかしそんなことはお見通しなのか、ノノハはカイトの傍に座って背中を撫でた。
「辛いこと……全部吐き出しちゃいなよ」
「ははっ、それは無理な相談だな」
ノノハの前で弱さを出すだなんて、カイトの中の何かが廃ってしまう。好きな子の前では強くありたいという、男の性がカイトを自制させた。相手が違っていれば話は変わっていたかもしれない。しかしノノハ相手にだけは強くありたかった。
「私は、私はいつまで傍にいるからね」
その言葉に含まれた重みは計り知れないものだ。それをノノハが正しく理解していたかどうかは分からない。恐らく励ましたい一心で言ったのだろう。その言葉の真の意味が叶えられる時に、カイトはようやく満たされるに違いない。
その時が訪れることを、カイトはただ必死に祈った。