少女マンガ『神様はじめました』の設定のみをお借りしました。巴衛→一方通行・奈々生(の立ち位置)→上条さんです。それでも大丈夫な方はどうぞ(^o^)/
不幸の代名詞とも言える上条当麻は、今世紀最大の不幸を経験中だった。父親の蒸発、学校を強制退学、住む家さえ失った。今の当麻には、夜を越す場所さえ無い。
「不幸だ……」
結局辿り着いたのは古ぼけた神社で、正直神を奉っているかも疑わしい。かろうじて保たれている社に、当麻はとりあえず今夜は此処に泊まろうと決めた。寝心地が良くなくても仕方ない、そんなことはもはや些事である。
「………おやすみなさい」
誰かいるわけでもないのに呟いてしまう。そうすることで何かを許して欲しいのかもしれないと、思わず自嘲した。やはり後ろめたい気持ちは消えない。
『………こりゃ随分な侵入者だなァ、オイ』
突然の声に思わず後ろを振り向く。今まで誰もいなかった筈なのに、そこにはヒトがいた。いや、よく見れば人ではない。頭からは耳(世間ではこれを獣耳と呼ぶ)が生え、尻尾もある。白髪というだけで奇妙なのに射殺すような紅の目。全てが物語っていた、彼は異質だと。
『にしても此処で一夜を過ごそうだなンて、面白い奴もいたもンだな』
「えっと………家主さん?」
『惜しいな、微妙に間違いだ』
長い着物をはためかせながら彼は当麻に近づき顔を寄せてきた。いまさらながら気づいたが、よく整っている顔だ。中性的というか、性というものを感じさせない。
『ふゥン、まァ適性が無い訳ではねェな』
「適性?」
『あァ、少なくとも俺の前で普通にしてンのだってスゲェンだぜ』
一応褒めに入るのだろう、にやりと笑った彼は億劫そうにその場に座った。何も言わずの沈黙、何をしたら良いか分からない当麻はただ黙って彼の目を見る。すると溜まっていたものが吹き出るかのように彼が笑い出した。先程までの射殺すような雰囲気は消え、妖々とした雰囲気のみが取り囲む。その時当麻は気づいたのだ。此処は彼のテリトリーの中、何かに嵌まったのだと。
『良いぜ、認めてやるよ。俺公認の土地神様だ』
ふわりと甘い香りが社の中を舞い、今まで古く脆かった調度品らが新しくなっていく。彼の中の力が社に満ちていくのを、当麻は身体と心で感じていた。
『名前は何だ、ご主人様?』
決して敬うような口調ではない。むしろ小馬鹿にしている確実に。しかし彼の問いに抗う気は更々無かった。
「上条……上条当麻だ。お前は?」
『一方通行、あンたの神使をしてやる奴の名前だ』
類い稀なる不幸人と人ならざる者との出会いは、いずれ街を世を変えていくことになるが、それはまた別の話。