毎学期ある恒例行事、もとい生徒にとって地獄である定期考査を二週間後に控え、ノノハとカイトは勉強会を開いていた。と言ってもノノハがカイトに教えるだけでありその逆は無い。上から数えたほうが早いノノハと下から数えたほうが早いカイトなのだから。
「問2答え違うよ。それは例題3の応用版だから」
「化学なんていらない。消えればいいのに………」
幼なじみとしていつものことなのでノノハにとっては当たり前な習慣になりつつある。しかしカイトの心境としてはむしろ好きな子に教えたい。つまりノノハに教えたい。だがカイトの得意な数学ですらノノハより少し下だ。パズルは得意だが如何せん勉強はてんで駄目だった。
「んー、ちょっと休憩しよっか」
水をこくりと飲めば、自然とカイトの目はノノハの喉にいく。嚥下する際に喉元が動くのを意識的でなくとも見てしまう。そこから少々男性的思考に向かいそうになるが、ノノハがいる手前押さえ込んだ。男は辛いと、こういう時に身に染みる。
「んじゃ再開しますか!英語やろ」
海外に住んでいたとはいえカイトの英語スキルは大して高くはない。日本に長年いる為英語圏での生活を忘れつつある。だからか、カイトの英語の成績は芳しく無かった。
「ノノハは流暢だよなぁ。英語圏とかいた?」
「んな訳ないじゃん。私日本から出たことないもん」
独学でこれならばカイトの海外生活は何だったのか、と少しため息をついてしまう。ノノハが努力家というのもあるのだが。
「にしてもホント勉強苦手だよねカイトは。パズルなら完敗だけど今はなんだか良い気分かも」
「こっちはいつも完敗みたいなもんだけどな」
何がとは恥ずかしくて言えないが、ぼそっと呟いた言葉はノノハの耳には届かなかったらしい。聞かれていたら困るのでべつに構わないのだが。ただパズルでは無敵なカイトも目の前にいる幼なじみ兼想い人には弱いのだ。