神祈の就寝後、神祈の心の中でとある会議が行われた。もちろん神祈自身は知らない。これはペルソナのペルソナによる神祈の為の会議なのだ。
「所持ペルソナ、全員集合しなさい」
スカディの一言で、次々とペルソナが顔を出していく。ヴィシュヌは髪を整えながら、億劫そうに。ネビロスは相変わらず無表情に。ジークフリードもネビロスと大差なく。ソロネは火の燃え方に注意しながら。チェルノボグはそっぽを向いて。アリスは眠いのか枕を抱きしめ。オオクニヌシは毅然と立ち尽くす。皆が各々の個性を発揮していた。
「スカディ、一体何の用ですか?神祈が寝ている今、私達にすべきことは無いでしょう」
抑揚を抑えたヴィシュヌの声が辺りに響く。ネビロスやジークフリード、ソロネやチェルノボグもそれに同意するかのように頷いた。
「黙れヴィシュヌ。お前などメシアライザー要員なだけだろう」
「マハフブダインだけが取り柄の貴女には言われたくないですね。あと不屈の闘志と勝利の雄たけびを持っている私はきちんと神祈に貢献してます」
「スカディはどうして怒ってるの?アリスよく分かんない」
「貴女は分からなくていいですよアリス」
「ペルソナ会議、とやらなのか?」
「そうみたいですね。スカディは何を考えているのか………」
「悪いが我々は帰るぞ。主が呼んでいないのに集まる理由が無いからな」
ネビロスの声を筆頭に、ジークフリード、ソロネ、チェルノボグは深層世界による戻っていった。スカディは何か言いたかったみたいだが、四体を敵に回して立ち回れるほどスカディは器用ではない。50〜60レベル級四体は85レベルのスカディには荷が重かった。
「全く協調性の無い奴らだな。まぁいい、お前達だけで良いだろう」
「貴女に強く言われる立場ではないんですがね。しかしレディーファースト、身を引きましょう」
同じ85レベルであるスカディとヴィシュヌは仲が悪い。それはどのペルソナも思うことだが、仲介に入ったりなどということは無かった。ペルソナの中で85レベルという高級な二体に手を出せないのだ。彼らに対応出来るのは神祈かシヴァだけである。
「アリス、呼ばれたから此処にいる。でも眠いからお人形さん持ってきたの」
「アリス、それはお人形さんではなく枕じゃないだろうか?」
優しくオオクニヌシがフォローをすると、勘違いに気付いたのかアリスは少し顔を赤らめ枕に沈めた。
「アリスはこんなに可愛いのに、同じ女性としてあそこまで違うと驚きですね」
「ヴィシュヌ、いい加減にしないと凍らすぞ」
「氷結無なので結構ですよ。好きにどうぞ」
「本当にお前は苛立つな。私はそこまで何かを嫌いにはならないが、お前だけは格別に嫌いだよ」
「お二方、喧嘩はそこまでにしたらどうだろうか。あまりペルソナ同士仲の悪いのは気持ちが良くない」
「アリスはみんな仲良しが良いよ。でも嫌なら、ヴィシュヌ………死んでくれる?」
アリスの声にヴィシュヌの肩がぴくりと跳ねる。彼女が気を込めて今の台詞を言えば、ヴィシュヌは高確率で死ぬ。ただでさえ闇は苦手なヴィシュヌに、闇のエキスパートであるアリスの死んでくれる?は大きすぎた。
「スカディも喧嘩、止めてくれる?」
「………幼女に叱られる程落ちぶれてはいない」
「ではもうお開きにしないか。あまり私たちが騒ぐと神祈に影響が出てしまう」
神祈の名が出れば皆は手を引く。ペルソナの行動原理を崩すような真似は決してしないからだ。
「ではみなさん、また後日タルタロスで」
「失礼する」
「ばいばい」
「はい」
四体のペルソナが深層世界に戻る。そしてしばらくしてから、すやすやと規則的な寝息を立てて神祈は眠った。