以下電極設定↓↓
・一方通行の電極充電はバッテリーをチョーカーから外して充電
この話だけの設定になるかもです(^_^;)
当麻は今あるものに追われていた。逃げたくても逃げられない。当麻の意志とは関係無く、それは追ってくる。
「追試は嫌だぁぁ!!」
明日、上条当麻は追試を受けます。
先週のこと、小萌のテストで見事赤点を取った当麻は、追試宣告を受けていた。クラス最低点を取ったのだから当たり前なのだが。当麻は今までも赤点を取り続けているので、本来ならば留年ものである。しかし小萌の恩赦で、追試で良い点を取れれば留年にはならないことになったのだ。
「上条さんは追試を忘れたわけではないのですよ。ただ魔術サイドで色々あったから……」
追試の勉強をしなければならないこの一週間、当麻は魔術関連で呼び出しを受けていた。何故この時期なのか、それは彼の不幸スキル故である。ステイルやら神裂やらと共闘し、結果魔術と科学双方の衝突を避けた功績は評価されるべきではあるが、小萌にはそのような事情は通用しない。仮に小萌に説明して追試を逃れる可能性があろうとも、当麻はその選択肢を選ばないだろう。
従って現在、当麻は追試の為の勉強をしているのだが思うようにいかない。追試範囲は分かっているので困らないが解らないのだ、答えが。正確には解方が解らない。公式や手順などから既にお手上げの当麻に、追試範囲の問題が解ける筈もなく、当麻は机の上に臥していた。
(こうなったら誰かに助けを求めるしかない!!)
携帯を取り出して当麻はアドレス帳を開いた。登録数は決して多くはないが誰か助けてくれるだろう、と。そしてアドレス帳を開いてすぐにその考えが当たっていたことを感じた。
「あっ、一方通行がいるじゃん」
あ行に登録された彼が目につくのは当然で、当麻の中に希望が生まれた。一方通行が優秀というのは衆知の事実であり、当麻もそう思っている。なにせ学園都市第一位の座にいるのだから。しかし一方通行など知り合いからして見ればまず第一に外す選択肢だ。そんな選択肢を真っ先に選ぶ当麻は、ある意味怖いもの知らずであった。
「よし、電話と」
番号を呼び出して当麻は一方通行に電話を掛ける。数コールした後、不機嫌そうな声を隠そうとしない一方通行が電話に出た。
「………もしもし」
「あっ、一方通行?ちょっと、というか重大なお願いがあるんだけど………」
「あァー悪ィ。今は正直厳しい」
「えっ!?上条さんが生きるか死ぬかの瀬戸際なんですが……」
「そンなにヤバイのかよ。―――分かった、今からコッチ来い」
ぶっきらぼうにそう言うと、一方通行は一方的に電話を切った。一方通行が不機嫌な理由を知る筈もなく、当麻は支度をした。
「歓迎してないけどいらっしゃい」
開口一番に毒舌な番外個体に対して心が折れかけたが、今はそんなことを気にしてはいられない。番外個体が何故歓迎していないのか、打ち止めがどうして迎えに出て来ないのかは、すぐに知ることになる。
「え……一方通行、もしかして寝てる?」
「寝かせてるの間違いかな、ってミサカはミサカは説明してみたり」
「今さ、電極の充電中なんだよね。まぁ無理矢理こちらがさせたんだけど」
「えっ、でも俺家に来いって一方通行に言われたんだけどさ」
「言われたじゃない、言わせたでしょ?一方通行にとって恩人であるアンタのお願い断れる訳ないでしょ」
「番外個体言い過ぎだよ、ってミサカはミサカは咎めてみたり」
お姉さんのような態度で番外個体を打ち止めは宥める。どうやらお邪魔をしてしまったのだと、当麻は察した。そして番外個体は一方通行を気遣かっていることも。
「一方通行ね、最近ちょっと忙しいみたいであんまり休んでないみたいなの、ってミサカはミサカは案じてみたり。だからね、申し訳無いんだけど今だけは休ませてあげて?ってミサカはミサカはお願いしてみる」
「いや、俺の方こそ悪かった。一方通行の状態とか気にかけずに押しかけちゃったし」
「………まぁ別に、一方通行なんて過労で倒れたって構わないから」
今さら取り繕ったところで遅いような気もするが、あくまで番外個体は一方通行を憎んでいるという立場を貫きたいらしい。そんな番外個体にくすりと笑って、打ち止めは当麻に顔を向けた。
「で、上条は一方通行に何の用だったの?ってミサカはミサカは疑問を投げ掛けたり」
「実は――――」
「なるほど、だからモヤシのところ来たんだ。まぁ妥当というか、でも勇者だよね」
「うん、普通なら違う人のところ行くと思う、ってミサカはミサカは本音を言ってみたり」
「うーん、でも俺の周りに勉強得意な奴ってあんまりいないんだよな」
「それならミサカにお任せだね」
「番外個体に?」
「ミサカは、というかミサカ全シリーズは知識をネットワーク共有してるのは知ってるよね。だからさ、ミサカ達にしたらこんなの朝飯前なわけ」
「おぉ!!何かすごいなミサカネットワークって。今ならプライド捨てるぜ、本当にありがとう!」
純粋な好意を向けられて番外個体は胸が苦しくなった。さすが上条当麻、何もせずとも番外個体にダメージを与えている。しかし純粋な好意は打ち止めも持っているため、耐性は出来つつあった。
「じゃあとりあえず、教科書出して―――」
こうして、番外個体を先生とした特別講習が開かれたのだ。
「ン………」
唸るような、寝ぼけた声がした方へ顔を向ければ、寝起きの一方通行がいた。目はいつもみたくキツイ感じではなく、ぼーっとしている。しかし一方通行は当麻を数秒見つめた後、毛布の中に包まってしまった。
「あれ、寝ぼけてたりするのか?」
「あ、電極外してるからだ多分」
確かに特徴的な黒いチョーカーが首に無い。チョーカーはコンセントの近くにあった。
「一方通行の電極ってさ、充電する時外さなきゃいけないんだよね。だからあんな感じなわけ」
その声にはどこか暗いニュアンスが感じられた。当麻は知らないのだ、ネットワークで補っていない時の一方通行を。もちろん本人が見られたり聞かれたりするのが嫌ということもあるが。
今の一方通行には全てが理解出来ていない。だから本能的な寒いという指示に従って毛布の中に包まった。目の前にいる上条当麻を認識していないからだ。番外個体にとって、一方通行が苦しむ姿は嬉しい筈なのに、電極を外している一方通行は大嫌いだった。
「もうしばらく、寝かせてあげよう」
打ち止めの言葉に反論する声は無く、三人は再び講習を再開した。
「留年は無しですよ、上条ちゃん」
テストには69という当麻にとって奇跡的な数字が書かれていた。