ある日の昼頃、一方通行は街を歩いていた。特に何かを買いたかったわけではない、ただ自然と足は街の雑踏を目指していた。歩く人の中には、一方通行を奇異の目で見る者もいる。なにせ白髪に特徴的な服で杖をついている学生だ、何か思われても不思議ではない。以前はこの視線が嫌で、嫌悪感を"反射"していたが今の一方通行はそれをどうでもいいと考えていた。心境の変化とは素晴らしいものだ。

街の人混みの中、ふと見知った人物が視界に入った。常盤台中学の制服を着ていて、頭にゴーグルをつけていて、つまりは妹達である。店の前で何か口論しているようである。これが他の人間ならば恐らく無視していただろう。しかし相手は妹達、つまりはミサカシリーズの一人。一方通行が無視出来る筈もなく、足を彼女の方へ向けた。

「ですから、この効能は確かなのでしょうか?とミサカは真偽を問います」

「あぁもちろんだとも。これを飲むと体内の脂肪が急激に燃えて新陳代謝も良くなって、良いこと尽くしなんだよ」

「しかしそのような物質が開発されて販売されているという事実は確認されていません、とミサカはこの商品の信憑性を疑います」

「まだ発表されてないだけなんだよ。発表されたら大騒ぎになってしまうからね」

「へェ、学園都市はそンなもンの開発に成功したのかよ。また随分なでっちあげだなァ、オイ」

不機嫌そうな声で妹達と店員の会話に割り込んだ一方通行は、商品を手にとって説明をよく読む。そこには一見らしく見えることしか書いておらず、全てが嘘であった。

「また随分と完成度の低いやつだな。片仮名並べりゃ良いとでも考えたのかよ。だったら残念すぎて笑えてくる」

明らかに馬鹿にされた店員は顔を赤らめ、立ち上がって激昂した。しかしそうする分だけ彼の無知が露見していく。街行く人々も可哀相な人を見る目で彼を見る。次第に恥ずかしくなったのか、彼は黙って店を片付け始めた。負けを認めた敗者を痛め付ける気は無いので、一方通行は妹達の手を引いてその場から離れた。

「ありがとうございました、とミサカは素直にお礼を述べます」

「あンな悪徳商法に引っ掛かってんじゃ無ェよ。古典的すぎンだろ」

ぶっきらぼうに言うと妹達は少し悲しそうな顔をした。そんな表情に一瞬打ち止めが重なり、無意識に一方通行の手は妹達の頭の上に置かれていた。すると妹達の顔が赤く染まっていく。あっ……と呟きながら手は震えていた。悪いと一方通行が手をどけると、その手を妹達が掴む。今度は驚いたのは一方通行だ。そんなことをされるとは思っていなかったので、双方動きが止まってしまった。

「わ、私は貴方に助けられて嬉しかったです、とミサカは素直に気持ちを述べます」

「放っておけるわけ無ェだろォが」

「………それはミサカが妹達だからですか?それともミサカだからですか?とミサカは貴方の真意を問います」

「ンなこと聞いてどォする。お前にはどうだってい「よくありません、とミサカは貴方を責めます」

「だってミサカは貴方が好きですから」

時が、時間が止まった気がした。


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