「マハガルーラ!!」
ティターニアのマハガルーラがシャドウ達を一掃していく。消えゆくシャドウを見ながら、神祈は息をついた。隣には心配そうに顔を伺ってくるゆかりがいる。今日はゆかりと神祈の強化という名目で、タルタロス探索は二人なのだ。
「神祈、顔色悪いけど大丈夫?」
「ありがとう、でも大丈夫だよ」
ペルソナを戻して薙刀を構え、くるりと一回転させて爪先をとんとんと鳴らす。これが神祈にとって戦闘が終わったという合図であった。これをやらないとどうにも気分が晴れないのだ。
「じゃあ行こうか」
気味が悪いタルタロスの中をゆかりと共に駆ける。しかし中は広く、結局散開して中を探索することになった。
「主人(マスター)、お疲れですか」
ふわりと肩に何かが下りる感触、それは肩から胸元へ腕を交差させるように抱き着いてきた。
「んー、別に疲れてないよ。私がこれくらいで息を切らさないの知ってるでしょ?」
「そうでした、なにせ貴女はかつて世界を救った存在。私は貴女を信頼しています」
絶対的に寄せられる信頼に、神祈は苦笑いをした。二周目と呼ばれる転生ををした今、神祈にはかけがえのない仲間を手に入れた。かつて全力で神祈を守ってくれたペルソナ達、彼らは生まれ変わった神祈に対して未だに忠義を尽くしている。それが神祈にとって何より嬉しかった。
「御学友様達とはまた別れる運命。たったの一年にも満たない彼らより、私達の方が貴女のお役に立てる筈。何故彼らを頼るのですか?」
「ティターニア、」
頭を撫でればティターニアは嬉しそうに微笑む。彼女はまるで人のようであった。ティターニアからの純粋な好意を受け取りつつ、神祈は仲間への好意を惜しみなく送る。それに嫉妬しているのだろう。
「たとえ一年だけでも、私はみんなが好きなんだよ。かけがえのない仲間だから」
「………、主人がそう言うのならば、私に異論はありません。ですがお忘れなきよう、私達は常に貴女の味方です」
それだけを言うと、ティターニアは自分から姿を消した。そして同時にゆかりから通信で階段を見つけたという報告を神祈は受けた。それに応じてから、神祈は薙刀を一度振り、ゆかりの元へ走った。