きっと彼は私を探していたのだと、ギルバートの体が倒れていく間に私は思った。小さな体で私を守ろうと、必死で駆けてきたのだろう。

違う、違うのだよギルバート。私が望んでいるのは、お前が無事でいることだ。お前が明るく笑って、マスターと読んでくれればそれだけで良い。金の瞳で私を見上げるように見る仕種が、それがとても愛しくて。

ジャックの刃がギルバートの首元に当てられる。背に傷を負ったギルバートは、顔を赤らめ息も絶え絶えとしていて、ジャックからもう一度致命傷を与えられれば、あの小さな命は儚く散るだろう。ジャックもそれを分かっている。

私が刃を下ろせばギルバートは助かる。ジャックにはギルバートを殺して利点はない。サブリエの悲劇は、ギルバートの命には代えられない。ならば彼には生きて貰わなければ。私の魂はたとえここで潰えても消えることはない。百の廻りを経てこの世に降り立てば良いのだから。

「ますたー」と、か細い声で名を呼ぶギルバートに慈愛の目を送ると、私は刃を下ろした。ジャックはその様子を一瞥してから、至福の笑みを浮かべた。


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -