4月9日〜5月8日
学パロになります。



放課後の教室に夕陽が差し込む。机などが影を生み、賑やかな声のない教室を儚げなものにしていく。

「ねぇ一方通行、ここ分かんない」

「授業でやっただろォが」

そんな教室でとある男女が椅子に座りノートと睨めっこしていた。正確に言えば睨めっこしているのは美琴であり一方通行は見守る兼教える役割である。内容は別に何ともないものである、一方通行にとっては。学園一の頭脳を誇る彼にとってこの程度は障害ですらないのだから。

美琴も成績は良かった。学園内で常に第三位をキープしている。端から見たらどちらも天才である。しかし美琴は必ずテスト前に一方通行から教わっていた。分からないところを一つずつ。美琴の頭なら正解まで辿り着ける筈なのに。

「お前……馬鹿になったか?」

「馬鹿!?ちょっとそれは酷いんじゃないの」

「いや、昔のお前なら聞きに来るとかなかったから」

「べ…勉強が難しくなったからよ。苦手は潰しておかないとね」

「じゃあそこら辺の教師共に聞けよ」

「あんたじゃ駄目なの?」

「別に構わねェが……」

変わったヤツ、そう呟いて一方通行はノートに視線を落とす。美琴のノートは綺麗に整理されていてとても見やすい。成績下位者でも彼女のノートで勉強すればおそらく上に食らいつける。なのに当の本人はこれだ。美琴は自身が思っているより優秀だしそれは一方通行も認めていた。努力でここまで追いついたのも頷ける。

「お前いつも第三位だろ。そこまで切羽詰めなくてもいいンじゃねェか?」

「切羽詰めてなんか無いわよ。勉強するの苦じゃないし」

「じゃあなンだ、垣根に追いつきたいのか?アイツあれでも頭だけは良いからな」

「第二位は別にいい。……まぁ越せるなら越したいけど」

「アイツ越したら凄いぜ。なンか奢ってやる」

「ホント!?よし、垣根潰す」

「潰すってお前……」

美琴はひたすら問題集を解き始めた。この分なら終わりまで解けるだろう。一方通行も実質ここに居るだけで、特に教えている訳でもなかった。少しヒントを出せば美琴は解けてしまうのだから。

「じゃあ俺は帰る」

「ちょっと!最後までいなさいよ!」

「別に俺が居なくても解けるだろォが」

「そうじゃなくて……。とにかくいなさい!」

美琴が消しゴムを構える。美琴の消しゴム投げは命中率が高く評判なのだ。その上威力も問題ある程痛い。一方通行は正直運動神経には偏りがあり、反射的に避けるとかは苦手なのだ。問題集もあと数ページ、あと十数分で終わるだろう。一方通行は席に着いて片肘をつくと、窓を見た。

夕陽に照らされて誰もいないグラウンドが映えて見える。テスト前の部活禁止時にしか見えない貴重な景色に一方通行は少し目を細めた。カラッとシャーペンが落ちる音。美琴は一方通行の方を向きぼぉーっとしている。

「どォした?」

「えっ……な、何でもないわよ!」

「……顔赤いぞ」

「ゆっ、夕陽のせいじゃないの?」

美琴はシャーペンを握り直して問題集に戻る。一方通行はそんな美琴を一瞥すると、また視線を外に移した。

「勝てよ」

「えっ?」

「垣根に。そしたら褒めてやる」

「別にアンタに褒められても嬉しくないわよ」

そォか、と一方通行は言う。夕陽のせいで笑っていたかは分からない。それ以降二人は黙ったままだった。

(別に……嬉しくなんかないんだからねっ!!)

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