この文はヴィンセントの望んだ「ヴィンセントがいない世界」です。暗いです!!
「どうして分からないの!!」
怒号と何かが割れる音が部屋に響く。ギルバートの小さな体は壁に叩きつけられて床に崩れ落ちた。その上に馬乗りになるように母親が被さる。
「なんでお母さんの言うこと聞けないの!!」
叫びながらギルバートの体を殴り続ける。ギルバートの服は長袖で体は見えない。きっとその衣の下は青紫に腫れているのだろう。いるべき父親は酒に明け暮れており家に帰って来ない。それがまた、母親の虐待を一層強くさせる要因だった。
「母さん、痛いよ」
ギルバートはそう呟く。すると母親は殴るのを止めてギルバートを抱きしめた。ぎゅっと抱きしめた母親はまるで別人で、先程までの行為が嘘のようだ。
「あっ……わたし、…違うの、違うのよ………ごめ、ごめんね……」
ひたすら謝り続ける母親にギルバートは何も言わない。なぜならこれが日常だからだ。日々の憂さや苛立ちを殴ることで発散する。そしてそれらを出し終えたら彼女はギルバートに赦しを請うのだ。済まなかった、と。そしてまた日常が始まる。この負の連鎖を誰も止めることは出来ない。
「救いが欲しい」
誰に言うでも無く、ギルバートはただ呟いた。幾多の世界の中の、自身を受け止めてくれる世界に向けて。
ちょっと後書き↓
ヴィンセントがいなかったらギルバートはジャックと出会ってないよね?という疑問から派生しました。そしたらこういう未来も有りかな、と。
後書き追加(11月29日)
グレン様ぁぁぁ。ジャックはマスターじゃないのにこんなネタ書いてスライディング土下座します。一応過去の遺物として残しておきますが、公式はグレギルです!(b^ー°)