都会はゴチャゴチャしている、と勾司郎は思った。空守村は国道が通っているのが奇跡と呼ばれる程の村なので、そんなこと村では感じたことがない。人々がせわしなく歩き回り車が往来し……、慣れない頃は酔いそうになる。この中から阿幾を見つけて捕獲なんて難儀すぎる。勾司郎は口には出さないものの、文句を言いたい気分だ。

「だから本当に助かるわ」

「なんだか都合よく利用されてないか?」

都会の喧騒の中、匡平を見つけたのはたまたまだった。確かに匡平の住所は知っていたけれど、会おうと思ってなかったのは事実。偶然大学からの帰宅途中とやらに信号待ちの匡平に出くわした。匡平は勾司郎に対して悪い感情を抱いていない。だからなのか、再会を喜んでいる様子だった。そして流れからお互い連絡先を交換した。

そこまでは何ともないのだが、匡平と勾司郎が握手をした時に問題が起きた。握手をした時に阿幾が匡平の後ろから抱き着いてきたのだ。まるで拗ねている子供のように。捕獲という任務を忘れ、思わず呆れてしまった。

「よぉ匡平。勾司郎と浮気でもしてんのか?」

「阿幾………、俺はお前のものじゃないから。第一握手程度で何言ってるんだ」

鈍い匡平を見ていて阿幾が可哀相に見えたなんて言えない。仮にも阿幾とは敵対している関係なのだから。でも不憫だった。

「まぁわざわざ出てきてくれたのは好都合だ。お社の命令、果たさせてもらうぜ」

「チッ、そういうことかよ」

言い終わらないうちに暗密刃に乗り阿幾は戦線離脱した。まさかこんな場所で案山子を使うとは思っていなかった勾司郎は、阿幾を追わずその場に座り込んだ。

「こりゃ早く回収しねぇとマズイな」

「街中で案山子を使うなんて何考えてるんだ阿幾は……」

しかしこの一件で勾司郎は理解した。阿幾を呼びたいのなら、匡平に手を出せばいいと。ストーカー紛いのことをしている阿幾だ。いつどこでも反応してくれる筈。

こうして阿幾捕獲が中々な成績を残していったのは言うまでもない。

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