綺麗だと思った。

果てしなく真っ白な体も

細すぎる身体も

鋭く、冷たい赤も

綺麗だ、と思った。

だから、つい、抱き締めた。なのに、

「殴ることはねぇだろ。俺ら初対面だぜ?」

垣根は、グーで殴られ少し赤くなった頬を、右手で擦る。

正直、そんなに衝撃はなかったのだが、誰にだってグーで殴られるのは痛い。

しかし、少年は反省もせずに、不服そうに、

「黙れ、変態野郎がァ」

「心配するな、自覚はある。俺、綺麗なのちょーすき」

「あァ? どの口がほざいてンだ。血、全部抜かされてェのかよ?」

「遠慮シマス」

ようやく痛みが引いて来た頬から手を離す。真っ白い少年は、舌打ちを打つと、もう垣根帝督には構わなかった。とゆうより、関わらない事を決めたみたいだった。

それでは、と思い、垣根は再び少年をジーッと見つめた。

パッと見て、少年か少女かが分からないほど中性的だ。

しかし、男子の制服を着て、声も男なので多分少年だ。

(まぁ)(どっちでもいーけど)

すると、垣根の視線に気付いたのか少年は眉を顰めた。

眉間に深い皺が出来て、垣根は思わず眉間に手を伸ばした。

「……なンだよ、気持ち悪ィ」

「綺麗なんだから、その顔止めろよ。もったいないだろ」

「こンなの綺麗だと思ったことは一度もねェんだが」

少年は、つまんなさそうに、吐き捨てるように言った。

そしてその言葉の後、少年の寂しそうな顔に垣根は気付いた。


(なんだっけコレ)


(なんて言うんだっけ)

見た目は愛らしいのに、中身は結構凶暴で。

プライドが高いくせに、強がりで、淋しがり。


(あー…)

さみしくて


寂しくて



死んじゃうんだ。



だからひとりにしちゃいけない。

だって

とても、とても、弱虫の寂しがり屋なのだから。

「……うさぎ」

「あァ?」

「そーか! お前、うさぎか!!」

「ふざけてンのか? 頭ぶち抜くぞ」

少年は、垣根を言葉で脅すが、垣根は動じない。

むしろ、目を輝かせている。

垣根は、眉間に触れていた指先を、離す。

そして空気を彷徨った手の平は、冷たい少年の小さな手を包んだ。

「俺は、垣根帝督」

「は?」

「よろしく、ラビット!」

「はァァァァァァァ!?」

ハロー、ラビット


(初めまして)(寂しがり屋さん)
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