今日の上条当麻はおかしかった、と青髪ピアスは後に語る。もちろんこれは青髪ピアス以外の皆も思ったのだが、上条当麻というだけで流されていた。大丈夫かこのクラス。

まずその@朝遅刻せずに時間内に登校してくる。

上条当麻は遅刻常連組であり、教師の月詠小萌もそれを認めている。しかし本日の当麻はチャイムの15分前には席に座っているという偉業を果たしていた。そして机の上には書き込まれたプリント類。それらは今日行われる数学テストの範囲の問題集だ。まず当麻がこのプリントを持っていたことが奇跡。次に答えやら式やらが書き込まれているのが奇跡。そしてそれを使って勉強しているという事実が奇跡だった。

「上やん……いったいどうした?何か悪いものでも食べたんじゃ……」

「おいおい、冗談言うなよ土御門。テスト前に勉強なんて当たり前だろ?」

―――上条当麻はどうやら未知の病原体に侵されたようだ。

そのAやたら授業中そわそわとしている

青髪ピアスの席は当麻の斜め後ろになる。そのため否応なしに当麻の姿が目に入るのだ。青髪ピアス自体が授業を真面目に受ける人間ではないので、自然と黒板から当麻へ移ってしまう。(小萌の授業なら話は別だが)シャーペンをカチカチさせる、ノートに書き込んでは消すの繰り返し、終いには窓の外を見てため息。家計が苦しい時などは最後の行動がよく目立つが、こうも揃うと最早変としか言いようが無い。恋煩いかと思いたいが普段の当麻からは絶対に思わせない単語なので自然に外れた。

「友人として、気になるよにゃ〜。あくまで友人として、別に面白いわけじゃないぜよ」

と笑いを堪えながら言う土御門に青髪ピアスは同意する。彼の台詞は丸々青髪ピアスと同じものだった。しかし普段から仲良くしている人間の変化は、青髪ピアスにも影響を表すもので。次第に苛立ってきた青髪ピアスは結果として当麻に直接聞いてしまった。

「えっ、俺今日変だった?」

どうやら我が友人には心当たりが無いらしい。どうしようもない人間に対して青髪ピアスは今日した事をつらつらと述べていく。すると当麻の顔が次第に赤くなっていった。

「いやさ、昨日から一方通行が泊まりに来ててさ。折角だからって勉強とか教えてもらってたんだ。でも俺って基本がバカだから解らなくて……。そしたら一方通行が『テストで平均点以上取ったらデートしよう』って言ってくれたんだよ。だからかな、すごく浮かれちゃってホント……、?どうしたんだよ、急に手を震わせて」

どうやら恋煩いが正解だったらしい。まさかの答えに青髪ピアスは驚くと同時に怒りが込み上げてきた。別に恋人がいてイチャイチャしていることへの嫉妬ではない。そんなわけ無いだろう全く……。

「ちょっと待ちましょ?どうして拳を振りかざしこちらに振り下ろすのかなぁぁぁ!?」

ちっ避けられた。次こそは外さない。

「待って待って、電話なんだ!!緊急の用ならマズイから!!」

仕方ない、と青髪ピアスは一度手を下ろす。それにホッとしたのか、当麻は安心した手つきで携帯を取り出した。

「もしもし?」

「遅ェよ、ワンコールで出ろって言っただろォが」

「ワンコール!?いやいやワンコールで出るなんて無理ですよ上条さんは」

「うるせェよ、耳元で騒ぐな。面倒臭ェから本題入るぞ」

「あぁ悪い。で、用件ってなんだ?」

「今日入ってた仕事が無くなった。黄泉川は警備員で芳川は呑みに、ガキは病院で検査だから今日は暇なンだよ。だから夕飯オマエが作れ」

「ちょっいきなりすぎないか?」

「………分かった。俺はオマエと夕飯が食いたかったがダメなら仕方ねェな」

「上条さんと食べたい!?分かりましたとも、好きなものをこの上条当麻作らせてもらいます」

「まァ期待しといてやるよ。じゃあな」

まさかの一方通行からの電話に当麻の顔が綻ぶ。普段裏の仕事に従事している一方通行には、休みという概念が残念ながら無い。だからなのか、最近会える機会がめっきり減ってしまったのだ。よって一方通行と過ごすこの二日間はとても貴重なものだった。

「よし、スーパー行って買い物しないとぉぉぉ!?」

当麻のちょうど横を金属バットが通り過ぎた。振り回した本人である青髪ピアスは平然とした顔をして、ただニコニコと立っていた。

「何怒ってんだよ全く……。あっそういえば、さっき何か言ってたっけ?」

本日何度目かの当麻の叫びが教室に響き渡った。




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時系列がめちゃくちゃなのはご勘弁です。甘いのはあまり書かないのでご希望に沿えたかは分かりませんが、リクエストありがとうございました。

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