「てめェ、何考えてやがる」
「俺?俺はいつも一方通行のこと考えてるけど」
「気持ち悪ィこと言ってンじゃねェよ!!」
「酷いなぁ、ふざけてなんかないのに」
当麻はそう軽口で言う。しかし彼の右手の中には光輝く物があり、誰が見てもナイフだった。
「毎日一方通行のこと考えすぎて頭が一杯なんだ。最近じゃろくに飯も食べてない」
「ホントにイカれたな」
「だからさ、思ったんだよ。俺だけのものにすればいいって」
「はァ?」
「一方通行は誰にも渡さない。打ち止めにも番外個体にも他の奴らにも、絶対」
「今すぐ病院行け。なンならタクシー呼んでやろォか?」
「だからさ、一緒に死のう?」
「……てめェ、マジで言ってンのか?」
尋常ではない当麻の様子に一方通行は後ろに下がる。しかし下がる度に当麻は一方通行の方へ寄ってきた。まるで蛇のように追い詰めていく。
「チッ」
一方通行の手が首元に伸びる。当麻に異能は通じないが能力が使えなくなる訳ではない。ここから一時的に抜け出すことくらい朝飯前だ。
「ダメだよ一方通行」
「何言って……ン…だ?」
一方通行の体が前に倒れる。支えるという意識を無くした体はそのまま地に臥した。
「これさ、電波を妨害する奴。じり貧の上条さんには荷が重い買い物だったけど、一方通行が手に入るなら安いものだよね?………って理解してないか」
演算を奪われた一方通行は現状が理解出来ない。もちろんこれから何をすべきかも。そんな姿を見て当麻は微笑った。
「一方通行、一緒になろうな」
当麻はそう呟くと一方通行の首にナイフを突き刺した。
「オッケー!良いわよ二人とも!!」
美琴の声をきっかけにざわめきが戻る。当麻はナイフを仕舞い、疲れた表情で座った。
「疲れたぁ………」
「俺の方が疲れたに決まってンだろ」
臥していた一方通行は床を背にしゃがんでいた。そこへ打ち止めが駆けてきてコーヒーを渡した。
「お疲れ様ってミサカはミサカは労ってみたり」
「………お前のためじゃねェよ」
「え〜、でもゲコ太特製特大クッション付きぬいぐるみを貴方が欲しがるわけないんだけどってチョップ痛い痛い!!」
「余計なこと言ったお前が悪い」
美琴が持っている紙には大きくゲコ太が写っていた。その下にはショートムービー部門と書いてある。
これは学園都市主催の学生向き映画コンテストなのだ。ロング、ショートと二つ種類があり一位を取ると非売品のグッズが貰える。そしてショートムービー部門の商品はゲコ太特製特大クッション付きぬいぐるみなのだ。
美琴が発案し、当麻を無理矢理参加させた。これを見た打ち止めがやりたいと言いはじめ参加。打ち止めが参加するなら一方通行も強制参加であり参加(商品はぬいぐるみとクッションで山分けだ)作品形態は今流行りの?ヤンデレ。となると狂愛になり、脚本は全て御坂美琴だ。男女のヤンデレは受けが悪いのであえての男物。全て美琴の案で異論は受け付けなかった。
「にしてもアンタ演技上手いわね」
「そりゃもう食事が賭かってるからな」
見事選ばれたら美琴が食事を奢るという話があったのだ。じり貧である上条当麻には大変貴重なものである。これがなければ受けなかっただろう。
「目指せ一位、頑張るわよ!!」
美琴の声がはきはきと、響いていった。