一方通行が打ち止めを溺愛していることは衆知の事実であり、疑いようのないことである。一方通行自身それを否定するつもりもなく、その事実は確固たるものになっていた。溺愛するあまり、打ち止めの嫌いなものを食べてあげたり欲しいものを買ってあげたりしてしまうことは教育上良くないことだが、黄泉川や芳川は特に咎めることをしなかった。一方通行がいた闇を知り彼を光へ戻したいと考えた結果である。気にかけるということは他者と関わることであり良いことだ。特に周りを遮断してきた彼にとっては尚更。

しかし最近になって分かってきたことがあった。確かに一方通行は打ち止めに甘い、そして同時に御坂シリーズにも甘かったのだ。オリジナルである御坂美琴や妹達は関わりが薄いが同居している番外個体はそうも言えない。番外個体はかつて一方通行と打ち止めを手に掛けようとした存在であり、今もそれについて言及していない。正直不穏分子といっても変わり無いのだ。

そんな存在を一方通行は邪険に思っていると、どこか心でそう考えていた。いくら御坂シリーズでも一線を画していると。しかし一方通行はそんな考えをものともせず、なんだかんだで甘かったのだ。打ち止めまでとはいかないものも番外個体からの行為には何かしら返しているし、無視ということはほとんどしない。(以前一方通行の機嫌が悪く番外個体を無視し続けたところ、彼女はグループ相手に彼の秘密を暴露したことがあった)番外個体の機嫌は常に大きく変動するので、正直何をするか分からないのだ。例えば……

「ねぇ一方通行、ミサカのこと好き?」

「あァ?」

「手を出したいとか、一線を越えたいとか思わないわけ?」

「ガキ相手にそンなくだらねェこと思わねェよ」

「何々?ミサカ相手じゃダメなわけ?もしかしてアンタ枯れてる?」

「ガキ相手に発情なんざしねェよ」

「へぇ、ミサカがガキだって言いたい訳だ。そのガキを怒らせたらどうなるか思い知りたい?」

翌日、一方通行名義で大量のアダルトDVDが自宅に届いた。

一方通行のことが嫌いなんだかよく分からない番外個体には、打ち止めも困っていた。周りには理解されないだろうが、打ち止めは一方通行が親愛的に好きなのではなく性的に好きである。過去のこと云々あるがそれは置いておいて。たとえ一方通行が打ち止めに気がなくても、一心に思い続ける気である。

そんな矢先に同じ御坂シリーズで尚且つシリーズで一番のスタイルをもつ番外個体が現れてしまった。このままでは一方通行が色気に流されてしまうかもしれない。数多くの牽制をかけてきたが番外個体はものともせず、今も尚一方通行にちょっかいを出している。そんな番外個体を一方通行は邪険にしないものだから、打ち止めの不安は溜まりに溜まって爆発した。

「一方通行!!」
「どォした?」

番外個体相手なら雑誌を読みながらだが、打ち止め相手なら読むのを中断してくれる。そんな優しさに少しばかり優越感を……ではなくて。

「一方通行は番外個体とミサカ、どっちが好きなの?ってミサカはミサカは思い切って疑問をぶつけてみたり」

「ガキ相手に好きだなんて感情もたねェよ。俺を犯罪者にする気か」

「周りの目とか風評とか関係ない!ってミサカはミサカは本気で聞いてみる」

「……打ち止め?」

「アナタはいつも番外個体に甘くて優しくて、ミサカのこと構ってくれなくて、ミサカ嫌われた?ってミサカはミサカは今までの不安を暴露してみたり」

「…………」

「うわぁ、何々、修羅場ってやつ?」

飲み物を手に入ってきたのは元凶番外個体。何やら楽しそうに笑ってこちらに歩いて来る。そして打ち止めを後ろから抱きしめると、自室へ連行してしまった。足をバタバタと振る打ち止めを軽々しく持ち上げながら、それでも笑っていた番外個体に一方通行は少し不安を感じた。

五分後、ドアが急に開かれ駆けてきた一人の少女。先程までの不安そうな表情は消えて、今はとても嬉しそうな表情である。打ち止めは一方通行の腹上に馬乗りに乗ると、嬉々とした目で一方通行を見つめる。見つめられることに慣れていない一方通行は目を逸らしてしまう。そんな行動でさえ嬉しいというように、打ち止めはニコニコと笑っている。

「アイツに何を吹き込まれた?」

「好意の裏返しについてとか!ってミサカはミサカはさっき言われたことを心の中で反芻してみたり」

「余計なこと教わってンじゃねェよ」

「ちなみにこの嬉しい気持ちはネットワーク配信中!ってミサカはミサカは報告してみたり」

喜んでいる打ち止めを扉の影から見ていた番外個体は、少し複雑そうな顔で見ていた。一方通行と打ち止めの為になる行動を進んでやった、という事実が今までの行動と異なっている。上のプログラミング通りに動く気は更々ない。でも結局負の感情を多く拾うのは防ぎようもないのに。

「成長じゃないかしら」

「っ!?」

「あの子達も当初より変わってる、成長してるのよ。貴方にも成長期が来たのかしらね」

「成長期………ねぇ」

「良いことよ、変わっていくことはね」

芳川は笑って番外個体の頭を撫でた。不服そうな顔をしたものの払おうとしない番外個体に驚くも、芳川は何も言わずリビングへ行った。

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