美琴の元に届いた書類、久しぶりの"裏"からのものだった。直接的に関わったのは妹達の為のDNAマップ提供時。美琴はあれから裏には関わっていない。超能力者で彼女がもしかしたら一番表の人間かもしれない。しかしその書類には信じられないことが書いてあった。

「一方通行との……再戦?」



美琴はとあるコンテナ置場に来ていた。妹達を止めるために以前向かった場所、当麻によって実験を終わらせた場所。時間より早く来て美琴は感傷に浸る。ポケットの中にはコインが5枚、足りるかなど分からない。いや、一方通行を前にして戦闘が出来るのか。以前と同じよう何も出来ずに終わるのではないか、美琴は思った。

「よォ、超電磁砲。お早いことで」

「一方通行……。」

コンテナ影から姿を現したのは対象である一方通行。灰色と白の長袖に同色のズボン、何より杖に目を引かれる。

(コイツ…足悪かったっけ……)

一方通行は美琴から三メートルほど離れた位置に立つ。

「で、目的は?」

「アンタとの再戦、私の方にはそう来た」

「何をもって勝ちにするかを聞いてンだよ」

「アンタが知ってんじゃないの?」

一方通行は首を軽く振る。知らないことの意思表示だ。

『対象者は所定位置について下さい』

備え付けスピーカーから研究員らしき声が聞こえた。監視カメラも多数あるのだろう。

『ただいまから実験を始めます。尚、勝利判定は生死ではなく膝をついた時点にします』

ピーーーッと笛がなる。

「膝をつかせるってどうすんのよ!!」

美琴は笛と同時に電撃を飛ばす。目指すは一方通行の頭。誰だって目の前にきたものを反射的に避けるだろう。一番起きやすい反射はしゃがむこと。しゃがんだ場合膝をつく可能性は大だ。しかし当然の如く"反射"された。正確に言えばベクトルを操作されて虚空に消えた。

(反射相手にどうしろっつーのよ!!)

美琴は電撃を飛ばし続ける。しかし結果は同じだった。

『第三位へ通告。第一位への能力制限は三十分』

「能力制限!?」

「チッ」

一方通行は美琴から距離をとる。美琴は一方通行をじっと見る。

(アイツ怪我でもしてんのかしら。まぁいいや、三十分保てばいいんでしょ!!)

美琴にとって長期戦はある意味得意分野だった。

一方通行にとって長期戦は最も相性が悪い。

(なンて実験しやがるンだ。どォせ俺が超電磁砲に手を出せないのを上は読んでるンだろォな)

一方通行はミサカ達を守ることを最優先に動いている。そしてそこにオリジナルである御坂美琴も加わる訳だ。故に美琴に攻撃を当てることは絶対に出来ない。

(こっちは時間が無ェ。荒っぽいがやるしかねェか)

一方通行は非道ながら攻撃するために美琴の前に出た。



(来たっ!)

美琴は電撃を飛ばす。しかしそれより前に風がきた。鋭利な、切り裂くような風が美琴を襲う。

(何よ……コレッ!!)

美琴は能力を発動させるが風が邪魔で上手く演算出来ない。

「超電磁砲、てめェの負けだ。」

「何言って……ん…のぉぉぉぉ!!!」

風がおさまり一方通行の声が聞こえた。しかしどうも涼しい。風が吹いている間なら分かるが止んだ後ではおかしい。まるで、冷気を遮る服が無いかのような感触。気がつけば美琴は下着姿だった。先程の風の摩擦で美琴の服が切られ焼かれたのだ。さすがに美琴に度胸があるとはいえ、外で下着姿で平気ではいられない。一方通行も一応は男、それが相乗効果になり美琴の顔は真っ赤になりその場にしゃがんだ。正確に言えば座り込んだ。

「アンタ……何してくれんのよっ!!」

「膝ついただろ、だから俺の勝ち」

「そんなことの為に乙女の服を裂いたわけ!?」

「別に気にするよォな体型でも無ェだろ」

「殺す殺す殺す殺す………」

「チッ、服の手配はやっておく。文句無ェかよ」

「あのねぇ、アンタ何したか分かってんの?」

「番外個体か?女物の服一式持ってこい。サイズ?あのクソガキだとチビすぎる。お前のだと丈はいいだろォが緩いな。中学生くらいの服だ」

一方通行は電話を切り、電極のスイッチを元に戻した。

「ねぇ、番外個体って…」

「あァ、妹達がセカンドなら番外個体はサードだ」

「あの実験ってまだ……」

「もう終わった。今は何にも無ェよ」

一方通行は携帯をしまうと、その場を立ち去る。

「アンタ、私を置いて行く気?」

「番外個体がもうすぐ到着する。大人しく待ってろ」

「じゃなくて私をこの姿で放置するわけ?」

「面倒臭ェ。」

一方通行は美琴の隣に座る。美琴は恥ずかしそうに顔を伏せた。

「いねェ方がいいんじゃねェのか」

「いなさい!」

番外個体にからかわれるまであと五分程。美琴は正体不明のドキドキに気づけずにいた。



「オイ、俺は電話で何て言った?」

「服を持って来てくれって言ったの覚えてないの〜?サイズまで細かく指定してきたくせに」

「俺は"女の"って言ったンだが」

「うちにはそのようなサイズはない」

「だからって何で俺の服なんだよ!!」

「だってミサカの服は緩いんでしょ?だったら丈は合わないけど緩くないのがいいかなって。アンタの服ならワンピースにはなるんじゃない?どう思う、お姉様?」

「なんか……嫌」

「はァ?」

「あんたと服の幅が同じなのが屈辱!そっ、その子の服は(胸の部分が)緩そうだけど、あんたのは綺麗に合いそうだから嫌」

「……サイズが合えば良いンじゃないのか」

「一方通行は乙女心が読めないねぇ〜。でもお姉様、安心していいと思うよ。コイツはただのもやしだから」

「もやしじゃねェ」

「う〜屈辱……」




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