「もしも第一位じゃなかったらどうする?」
一方通行はコーヒーを買うために、コンビニへ来ていた。気に入っていた銘柄をカゴ一杯に入れる。細腕にはきつそうだが、そこは男としてギリギリ持てる重さだった。計算している訳ではない………筈だ。無意識に持てる重さを感覚から計り計算している可能性はあるが、それを認めると非力ということを実感するため思考しない。
外は寒くはないが快適な温度ではなかった。早く帰ろうと思い帰路につく。ちょうどその時、聞き慣れた声がした。その声は一方通行の名を呼んでいる。大きくなるあたり、走ってきているのだろう。声の主、上条当麻は一方通行に追いつくと隣につく。それに関して不快ではなかった為、何も言わず歩き続ける。当麻は何も喋らない、一方通行も喋らない。そんな状態が続き、一方通行の家が見えてきた辺りで冒頭の台詞に戻る。
「はァ?何言ってンだ」
「いやさ、一方通行は第一位として今まで日々を過ごした訳じゃん。でもさ、環境が違ったら一方通行は今の一方通行じゃないんだよな」
「……まァな。人の人格や行動なンかはガキの頃に形成されンだろ。だったら変わンじゃねェのか?」
「でも俺は第一位の一方通行と出会ったんだよな」
「何が言いてェンだよ。」
「俺が今の一方通行に出会ったのってさ、天文学的な確率なんだよな。だって生まれたときから無数の選択肢があって、それを選んだ結果が今だろ。その今に俺と一方通行がいるってことに、何か感動しちゃってさ」
「ハッ、随分ロマンチックな発想だなァ」
「んなこと言うなよ」
「………たとえ、途中で違う選択肢を選ンでも、結局は同じなンだよ。出会う奴は出会うし、出会わねェ奴は出会わねェ。だから確率論じゃねェだろ」
「運命かよ。一方通行も人のこと言えないぜ」
「黙れ」
「……運命ならさ、どうなるのかね」
「………未来か?」
「上条さんと一方通行に明るい未来はあるのか」
「少なくともおまえはあンだろ。シスターや第三位、他にも表の奴らが」
「一方通行だって打ち止めがいるだろ」
「俺はアイツが無事に生きれるようにすンのが仕事だ。端から共存なンか望んじゃいねェよ」
「そっか。覚悟がすごいな。じゃあ上条さんはそんな一方通行を救う運命だな」
「てめェ、馬鹿にして「一方通行が不幸で俺が平穏はフェアじゃないだろ。それに大事な奴を守るくらいしたいさ」
「……ンなの無理だ」
「ピンチには強いですから」
「……もしも俺を救ったらよ」
「?」
「シスターとクソガキと何か食いに行くか」
「いいね、約束があると燃える」
当麻は一方通行に向き直り、じゃあなと声をかける。一方通行は何も言わず、立ち去った。その顔が綻んでいたのは、誰も知らない。