「見てー大きな花火が見えるってミサカはミサカは実況してみる」

「うっせェよ。ンなの言わなくてもわかるだろォが」

二人は河川敷で行われる花火大会を見に来ていた。

「ったくなンでオレがこンなとこ来なくちゃいけねェんだよ」

「でもちゃんと一緒に行くって自分で言ってたよ?ってミサカはミサカは確認してみる」

「ちっめんどくせェ」

事の発端は一時間前に戻る。





「ねぇ一方通行。これ見に行きたいってミサカはミサカはお願いしてみる」

「あァ?花火大会だァ?」

打ち止めが持っていたチラシには、今日行われる花火大会の広告が大きく一面に載っていた。

「ハッ知るか。黄泉川にでも行ってもらえ」

「でもアンチスキルの仕事あるっていってたからダメだってとミサカはミサカはちょっと拗ねてみる」

「じゃあ一人で行って来い」

「嫌だー一緒に行きたい!ってミサカはミサカは強引勧誘してみたり」

「ンなめんどくせェこと出来るか」

「めんどくさくなんかないもん、ただちょっと行って見るだけだもん、とミサカはミサカは一生懸命説得してみる」

「オマエのことだから出店見たいとか行って結局遅くなンだろ」

「むー否定出来ないから何も言えないーとミサカはミサカはちょっと正直になってみたり」

「じゃあこの話はオワリだ」

「・・・。分かった。ミサカは一人で行ってくるってミサカはミサカは諦めてみる」

ようやく引き下がったと思った瞬間、「向こうで大人の人に頼めばきっと買ってくれるもんってミサカはミサカは人々の暖かさを信じてみる」―――空気が凍ったように感じた。

「は?オマエ何言ってンだ?」

「だからー向こうで会った人に奢って下さいって頼むの!!とミサカはミサカはいちいち説明してあげたり」

言っていることが支離滅裂だがこの展開はマズい。打ち止めはまだ10歳程度の子供だ。当然この世にはこんな小さな子に奢ってくれと頼まれても奢る奴なんていない。………ある人種を除いては。その人種のまたの名をロリコンという。ちなみに過保護とは違うので要注意。彼らにとって打ち止めなんて格好の餌食候補だろう。おまけに打ち止めは他人の悪意に関しては鈍感だ。下手したら最悪の事態になる可能性もある。

(チッ、めんどくせェ)

「分かった。一緒に行ってやるよ」

「嬉しいってミサカはミサカは感動の意を表してみる!」

こうして二人は花火大会に行くことになった。河川敷には、花火大会のための出店がたくさんある。

「うわーたくさんあってどれ行くか迷っちゃうってミサカはミサカはうっとりしてみたり」

「出店は逃げねェンだから、ゆっくり見ればいいだろ」

「うん、そうするってミサカはミサカは視線を巡らせてみる」

そう言ってどうやら心は迷宮の中に誘われたらしい。

(それにしても結構人来てンな)

一方通行の顔と名前はいろんな人に広まっている。ここで絡まれて喧嘩になる可能性もある。

(まァバッテリーもまだあるし平気だろ)

そう思っている時、袖を引っ張られる感触がした。

「あァなンだ?もう決まったのか?」

「ううん。あのね、あれが何か説明してほしいのってミサカはミサカは聞いてみる」

打ち止めが指を差した先にはお面屋があった。

「あァあれか。あれはお面屋って言ってお面売ってる店だ」

打ち止めの顔を見ると?が浮かんでいた。どうやらお面が分からないらしい。めんどくさいと思いながら一方通行は打ち止めにお面について教えた。まぁ彼自身そんなに知ってはいなかったのだが。

「へぇ〜お面ってそういうものなんだーってミサカはミサカは感動してみる」

「あァそうかよ」

「でもね・・・ミサカはあなたが分からないミサカのためにわざわざ説明してくれたことが嬉しいよってミサカはミサカは照れながら言ってみる」

「・・フン、そうかよ」

そっけなく言った一方通行だったが、その顔はすこし赤くなっていた。

「じゃあミサカは初お面屋さんにレッツゴー!とミサカはミサカは実況してみる!」

打ち止めは人ごみの中を避けながらお面屋に向かって走っていった。


「えぇーこのお面無いの!?ってミサカはミサカはガッカリしてみる」

「ごめんねお譲ちゃん。さっき来た女の子が買っちゃったんだ」

「そんなに人気が出るモンじゃねェと思うけどな」

「だから見本とあと一個しか持ってきて無かったんだよ。悪いね、ホントに」

そう言われた打ち止めはすごく落ち込んでいた。その落ち込みは他を回っているときもだった。

「第一そンなにアレ欲しかったのかよ」

「もちろんだもん!すっごく可愛かったんだもんってミサカはミサカは主張してみる」

「オマエと好みがかぶる女なンてオマエ以外いねェんじゃねェのか?」

「それでもこの世にはそんな子がいたんだもんってミサカはミサカはその買った女の子を恨んでみる」

どうやら男と女では恨みのレベルが違うようだ。

「分かったよ、今度似たようなやつ買ってやるよ」

「ホント!?今日はいい日だなーってミサカはミサカはウキウキしてみたり」

どうやら機嫌は直ったらしい。

(女って機嫌が悪くなンのも、良くなンのも早えェな………)
そんなことを考えながら歩いていた。



出店やら模擬店など巡り、とうとう花火の時間が始まった。

「ここなら花火見れるかな?ってミサカはミサカは自分の全知識で考えてみたり」

「ンなこと全知識で考えるようなことじゃねェだろ」

そんなことを話していると、花火大会が始まった。



「おぉーこれが花火!!ってミサカはミサカは全身で驚きを表してみる!!」

「はァ?あンなのただの………」

と続きを言おうとしたが、楽しそうな打ち止めに水を差したくないと何故か思った。

(ンなことオレが思うなンてな………)

一方通行は最近の自分はなんだかおかしいと思っていた。何故か自分の周りに引いた一線が甘くなっている気がすると思い始めていた。



昔から自分は他人の愛情を受けてこなかった。そのため、自分の感情も無意識に押さえつけていた。そんな自分が起こしたレベル6に上がるための実験。否定権は無かった、のだろう。―――そう思いたかった。そう思わなければ、何かが壊れる気がしたのだ。自分が殺した彼女達には、罪なんて何も無くて。ただ自分のために・・・いや、学園都市のために彼女達の命は散った。自責の念はあったかもしれないが、当時の自分には気付くなんてことは出来なかった・・・いや、しなかった。全てを終わらせたのは見ず知らずの無能力者というのは腹が立ったが、終わっていなかったらと考えると少し思うところがある。そんな自分が打ち止めと出会ったのは、慈悲無い神の気まぐれだったのだろうか。彼女を救う代わりに自分は能力に甚大な制限を負うことになったが、それでも彼女を”壊す”のではなく”救う”という選択を選ぶことが出来た。今までの自分なら考えられないようなことだ。打ち止めという存在は自分にとって太陽に等しい存在で、何にも代えられない。その彼女を守るためならば、自分はどんなことでも出来るのだろう。

(こンなこと考えるなンてな………)

隣で楽しそうに花火を見ている打ち止めを見る。彼女は自分がどんな存在であるか知っている。にも関わらず、隣で微笑んでくれている。

(コイツはオレをどう思ってンだか………)

一方通行がそんなことを思っていると、花火の音が消えた。どうやら終わったらしい。

「ねぇねぇ終わったよ、ちゃんと見てたの?とミサカはミサカは疑ってみる」

「ンなのどっちでもいいだろォが。とっとと帰るぞ」

「うん!!」




帰ろうとしたとき、なにやら騒がしかった。

「ねぇアレ見て!!ってミサカはミサカは指を差してみる!」
差された先には、どうやら人が争っている場面が見えた。

「だーかーらとっとと食い物出せって言ったんだよ。」

いかにも古典的なチンピラといった輩が、出店に群がっていた。

「こっちだって商売なんだから、お金を出してもらわないと………」

「あぁ?ほら、ちゃんと金払ってんじゃねえかよ、10円」

「そ………そんな………」

遠巻きにたくさんの人が見ているが、誰も止めようとしない。誰だってこんなのに絡まれたくないだろう。そんな中・・・。

「ちゃんとここに300円って書いてあるよってミサカはミサカは親切に教えてあげてみたり」

「・・・なんだこのガキ」

打ち止めが何故かその中にいた。

「え?だって読めなかったから10円出したんじゃないの?ってミサカはミサカは驚いてみる」

「んなわけねぇだろーが!!」

チンピラの一人の腕が打ち止め方へ伸びたとき………。

「おい、てめェら何してンだよ」

そこには隠すことなく殺気を出していた一方通行がいた。

「誰だ、このガキ」

「ガキ二人で何かするんですか〜?」

おそらくこのチンピラは知らないのだろう。目の前にいる二人が学園都市最強と彼を起爆させる唯一の導火線であることを。

「ったくコッチは花火見に来ただけだっつーのに」

ここで銃を抜けば一発だろうが、この中で抜くのは気が引ける。

(こンな奴らに能力使うのもめんどくせェが、やるしかねェか)

一方通行はその辺にあった小石を持つと、チンピラの一人に向かって投げつけた。もちろん、能力開放して。その瞬間、鈍い音が響いた。恐らく皮膚にめり込んだのだろう。一方通行としては貫通しない程度まで手加減するのは珍しかった。悲鳴はあげてるらしいが、声にならないらしい。

「死にたくないなら、とっととどっか行け」

そういうとチンピラ達は一目散に逃げていった。




「ったく弱者なンてあンなもンだろ。おい、とっとと行くぞ」

「うん。ありがとね、守ってくれてってミサカはミサカはお礼を言ってみる」

「別に守ったンじゃねェよ」

二人が去ろうとすると………。

「待ってくれないか。」

振り向くとお面屋の人がいた。差し出した手にはお面が乗っている。

「あんたたち助けてくれただろ。これ、余ったから持っていきな」

「えっ!ホントにいいの?ってミサカはミサカは再確認してみる」

「あぁ持っていきな、お嬢ちゃん」

「うん、ありがと!!ってミサカはミサカは全身で喜びを表してみる」

一方通行は幸せそうな打ち止めの顔を見て、何故か心が緩んだ気がした。

「やっぱりあなたが守ってくれてよかったってミサカはミサカはもう一度お礼を言ってみる」

「だから別に礼を言われるようなことじゃねェよ」

そんなことを言いながら二人は歩いて帰っていった。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -