監督と意見が合わずに代表を辞めた時、監督が言った言葉を勇志は今でも覚えていた。
「お前程の才能を持ちながらどうして………」
期待はされていた。指示されたことの一歩先のことを勇志はしてきたし、それを当然だとも思っていたあの頃。純粋にサッカーが好きでプレイする場があるならば何処でもよかった。たまたまそれが代表の中だっただけだ。
スタイルを崩さないというスタイルは周りからあまり受け入れられず、それが勇志の首を絞めていった。別に個人プレーをするわけではない。ただ周りに染まらないだけ。代表だからいって楽しむ心を失ったら駄目なのだ。
「周りから見たら俺は馬鹿かもな」
目の前で楽しそうにプレイをする子供達。彼等が勇志の過去を知り価値を知るのはいつなのか。過去を知られたからといって不利益はないので別段問題はないが、距離を置かれてしまったら寂しい。ただ楽しんでサッカーをしている姿を見たいためなのに。
「ユウシー!!」
グラウンドから吏人に呼ばれる。どうやら審判で揉めてしまったらしい。子供達だけでは水掛け論になることは目に見えているので、勇志は椅子から立ち上がりグラウンドへ向かった。
「あれ、勇志さんじゃないですか?」
「あぁ?」
目線の先には子供達と戯れている勇志の姿があった。
「アイツ、本当にガキに教えてんのか」
「でも………楽しそうですね、勇志さん」
グラウンドで共にサッカーをしている勇志の顔は、代表ではあまり見せなかった"本物"の笑顔だった。彼は代表の中で失いかけたものを、きっとあの子供達の中で見つけたのだろう。
「フン、良い顔しやがって」
子供達に囲まれている勇志を少し見て、彼等は歩きだした。勇志が進まなかった道へ。