「ギャモン君って筋肉質だよね?」
全ての始まりはここからだった。
遡ること1時間程、本日も大門カイトVS逆之上ギャモンの大食い競争が勃発していた。しかしこの競争は定例化していて、以前のようにハラハラさせることも無くなっていて、ノノハにとっては安心になっている。キュービックはパソコンとお見合い中でアナは外の絵を描いていて、なんとものどかな(?)一時である。
「にしても暇だなぁ。部活昼練行こうかな」
普段から部活をしている為昼まで参加する理由など無いが退屈ならば行くのもアリかもしれない。ここにいる人達は変わった人ばかりだがノノハは保護者ではないのだ。
部活に行こうと階段を降りようとすると罵り合いが聞こえて来る。恐らく競争が終わったのだろう。そしてまたお互い負けを認めず明日再戦するのだ。一週間は続いているこのパターンに、ノノハは頭を抑えた。
その時チラリと、ノノハの視界に入ったのは椅子に踏ん反り返って座っているギャモンの姿。この様子だとギャモンが勝ったようだ。学生らしくない大柄な体を見て、ノノハの口からポロリと言葉が漏れた。
「ノノハ!!今なんて言った!?」
「カイトいきなりどうしたのよ。………別にギャモン君ってよく見たら良い体してるなって思っただけだけど」
「まぁこのオレは日々の訓練やらを欠かさないからな。おまえと違って貧弱には出来てないんだよ」
「貧弱って……、上等じゃねぇか。俺だって男としての威厳はある!!」
「うわーカイトとギャモン喧嘩してる。アナはここで見てるだけだけど」
「こんな馬鹿けた争い気にしなくて良いですよ、ノノハもね」
「でもなんか収拾つかなくなってない?」
「諦めろよ大門カイト。所詮おまえ如きがオレ様に勝てる訳ねぇだろ?」
「うるせぇ!!こっちは毎日タンクトップ着てんだ!暑苦しいライダースーツみたいなの着てるおまえとは違うんだよ!」
「オレ様の服にケチつける気か、あぁ?第一タンクトップと筋肉質は関係ねぇだろ」
「アナが思うにしばらく続くから、ノノハは部活行ったらどうかな?」
「………そうしますね。何かあったらこのクッキーをカイトに食べさせて下さいね」
「あっ、カイトの意識が飛ぶクッキーだね」
「理由は聞きたくないですけど」
「じゃあねノノハ、また明日ここで待ってるから」
「キュービック君もじゃあね〜」
騒ぎの本人であるノノハは消えたにも関わらず、二人の口論は続いている。仲が良いな、と見当違いなことを思うノノハだった。