つぅー……と赤く煌めくものが要のこめかみから頬を伝っていく。それが血であると先に気づいたのは、要本人ではなく春達であった。
「要くん!!ちっ、血が流れてます!!」
「あぁーホントだな。まぁ大したこと無いから気にしなくても……」
「そんなこと出来ません!!」
目を見開き顔を明らめ、春はとても真剣な声で叫ぶ。いつものようなおおらかな春ではないことに、要は少し戸惑った。
「春落ち着きなよ。とりあえず要はこれで止血ね。あと祐希は―――」
流石は兄というべきか、悠太は落ち着いて春を宥め適切な処置をしていく。止血の手際の良さもあり、すぐに血は止まりそうである。
「じゃあ祐希は救急車と要のお母さんに連絡して」
「落ち着くのはお前だろうが!!」
スパンと綺麗に要のツッコミが入る。しかし思わず勢いで立ってしまった要は、軽く貧血を起こし上体をふらつかせた。
「要くん!!」
「あぁー悪い悠太」
「お安い御用で」
ふらついた体を咄嗟に支えた悠太は要をベンチに座らせた。少量とはいえ頭から血を流す程である。それに要は元から貧血ぎみであった。
「祐希、レッツゴー」
「うん、とりあえず校内は探してみるから」
俊足と謳われた祐希が校内を駆けていく様は、なんとも違和感のオンパレードだった。最も本人のビジュアルが良いので株は上がる一方だが。祐希はめんどくさがりだが、今回はきっと本気だろう。何せ当たったのが要なのだから。
「愛されてるね――」
悠太の呟きは祐希の姿を見た女子のざわめきに掻き消された。