レベル4との戦いが終わった。結果として、元帥という強大な力無くして勝てないというエクソシスト達にとって苦痛の事実を残して。失った研究員は半数、教団に大きな爪痕を残していった。
「アレン君!」
ぐったりとして動かないアレンにリナリーが呼び掛ける。アレンは神ノ道化で体を操っていた。つまり動けない体を無理矢理動かしていたということ。動けるエクソシストで彼が一番の重傷かもしれない。
とにかく誰か人を呼ぶ必要がある。リナリーのイノセンスを使えば運べるが、リナリー自身のダメージが発動を困難にしていた。監査官と言っていたリンクを探そうと腰を浮かせると、服の端を引っ張られた。
「リナ…リ……」
「アレン君」
「僕…を、…―――に連れて…行っ…て……」
「えっ?」
アレンが連れて行って欲しかった場所は予想していない場所だった。
「リナリーとアレン!?」
リーバーが二人に声を掛ける。リナリーがアレンに肩を貸しているのを見て慌てて代わった。
「アレン君がここに連れて行って欲しいって」
「アレン!?」
アレンはリーバーから体を離すと人だかりの方へ。ふらふらとして危なっかしい。人だかりの先には守化縷にされた研究員達が。無事だった研究員達が泣きながら、犠牲になった仲間が砂になっていくのを見ていた。その人の中にアレンは入っていった。研究員達はアレンが研究員達の見送りをしに来たのだと思っていた。
次の瞬間アレンの身に纏われる白き仮面とマント。動くのも困難なのにイノセンスの発動。尋常じゃない負担が体にかかるのも気に留めず、アレンは守化縷の元へ。静止の声が聞こえるがアレンの耳には入らなかった。
タップだった守化縷の元にはジョニーと他の研究員の姿。ジョニーはアレンの発動している姿を見て驚いていた。戦いは終わった、発動する必要はないのに。
「……アレン?」
「ジョニー達、離れて」
ジョニー達が離れたのを確認してから、アレンは腕を剣に換えた。そのことに周りからは驚愕の目を向けられる。そしてアレンは剣を守化縷に"刺した"。
「―――――!!」
守化縷から叫びが上がる。まるで断罪されるような叫びが。研究員達が守化縷の姿を凝視した。
そして彼等は気づいた。守化縷の姿が変わっていくことに。まるで殻が割れるように外壁が崩れていく。そして―――
「……タップだ」
殻の下から出て来たのは、タップ。眠るように動かないが脈はあり、生存を示していた。
「僕のイノセンスは退魔だ。早く、他の人も集めて下さい。時間がない」
アレンはふらつきながら他の守化縷の元へ行こうとして―――倒れた。研究員達が身を起こさせるが、同時に少なくない出血。放っておけば確実に死は避けられない。医務班の迅速な手当が必要だった。
「誰か医務班を!!」
「他の守化縷はどうするんだよ!」
「この出血量じゃ発動は無理だ」
「そんな………」
バタバタと足音がして医務班とコムイがやってきた。
「状況を!」
「アレンウォーカーが重傷、手当を」
「待て、どうしてアレン君が?」
「守化縷を一人戻して、それで…」
「守化縷を!?」
コムイの目の先には退魔されたタップの姿が。先程までの姿ではなくタップの姿である。
「アレン君が……」
「もう発動は無理です」
「分かった。彼を急いで治療室へ」
こんなオチが良かった。