DREAM REBORN! | ナノ
無口な彼から一言


私の彼は一言で言って無口である。付き合うとなった時も特に愛の言葉を
囁かれたわけでもなく、流れでそうなった。
だから私は彼から好きだと言われたことがない。言われないと分からないわけでもない。
彼は行動で示してくれるからだ。キスだって抱きしめてくれたりだってする。
それなのに、やっぱり寂しい感じがする。

「…おい、何ぼーっとしてんだよ」

私はいつものように彼の部屋にいた。
何をするわけでもなく、彼が私を呼ぶからである。そして、いつものように膝の上が私の特等席。

「ううん、なんでもないよ」

私は作り笑いで彼を見た。最近、不安でたまらないのだ。彼の帰りがだんだん遅くなっている。外で新しい彼女でも出来たんじゃないかって、ルッス姐さんやベルは言うけれど…。

「なら、そんな顔すんじゃねぇ」

「……」

「もっと楽しそうな顔をしろ」

そんなこと言ったって。
外で出来た新しい彼女さんは、きっとこんな顔しない。私だって、せっかく一緒にいれるのだから、こんな顔でいたくない。でも、させてるのは誰?

「…もういい。今日はもう部屋に帰れ」

そう言って彼は、私を膝の上から下ろす。
ズキッ…と心が痛む。泣きそうだ。

「…ん…だよ」

「あ゛?」

「ボス…、私は…不安だよ」

言うつもりなかったのに。言いたくないのに。感情とは裏腹に口が勝手に動き出す。

「どうして…、最近帰りが遅いの?あ、…新しい彼女でも…出来たの…?」

私の口の馬鹿。そんなこと聞かなくてもいい。聞いたってどうせ、自分を苦しめるだけなのに。感情が抑えきれず、涙も出てくる。

「ぼ、ボスはっ…一度だって、私のこと…!好きだっ…て、言って…くれな…?!」

泣きながら訴える私を彼は優しく、だけども強く抱きしめてくれた。

「…何勝手に解釈してんだよ。誰に吹き込まれたか知らねぇが、俺の愛人は名前だけだ…」

「っ…!」

私は思わず彼の顔を見上げた。すると、

「…こっち見んじゃねぇ」

と言って、頭を押されまた視界が彼の胸板になった。

「…俺はよ、こんなに人を好いたのは初めてだ。だから、どうやってこの気持ちを相手に伝えるのか分からねぇんだよ。言葉より行動だと思っていた。…だけど、違ったみてぇだな」

そう言って、彼は抱きしめる腕を緩め、私と向き合う。
そして静かにキスを落とした。それはいつもより深く、甘いキス。

「ボス…!」

再び私は彼の腕の中へ。そうして、耳元に低い声で一言。

「…愛してる」

無口な彼から一言
(帰りが遅いのは、お前のプレゼント探しだ。誕生日おめでとう、名前)
(あれ…き、今日私の誕生日?!)


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