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看病をさせて


「…今日、まこちゃん休みなんだね」

いつものようにみんなで屋上で昼ごはんを食べているとき、渚くんがそう言った。

「そうなの。だから私、今日お見舞いに行こうと思って…」

「いいなー!僕も行きたい!!」

「渚くん、遊びじゃないんですから…。それに大人数よりも、彼女さんが行ったほうがいいんじゃないですか?苗字さん、お願いしますね」

はしゃぐ渚くんをなだめ、伶くんが口をはさむ。

「そうだな…。苗字、頼んでもいいか?」

遙くんからもお願いをされる。

「うん、任せて!」

真琴くんを驚かせたいから、内緒で行っても…いいよね?


放課後。私は、近くのスーパーに寄って薬やら果物やらいろいろ買ってから、真琴くんの家に向かった。付き合ってから、何度かしか行ったことのない真琴くんの家のインターホンを押す指が緊張する。

――ピンポーン

「……はい」

少し間があってから、鼻声の真琴くんの声がする。お母さん、いないのかな?

「あ、あの…!苗字ですけど…!ま、真琴くんのお見舞いに来ました…!」

「…え?…ええ?!」

「と、突然ごめんね!!でも…」

「え、えと、とりあえず鍵、開けるね」

やっぱり、迷惑…だったかな?

「いらっしゃい」

普段見ないラフな格好をして、少しだるそうな真琴くんが出てきた。

「お、お邪魔します…」

足取りがフラフラする真琴くんの後ろを静かについていく。そして、見慣れた、だけどまだ少し緊張する真琴くんの部屋に入る。

「ご、ごめんね…。いきなり来て…。その、驚かせようと思って…」

「うん、確かにびっくりしちゃった」

ベッドにもぐりこみながら真琴くんは言う。

「でも、ありがとう」

いつものあの優しい笑顔を向けてくれる。それでも、やっぱり気分が悪そうに見えた。

「あ、あの、お腹空いてない?おかゆ…食べる?」

「じゃあ、お願いしようかな?」

「うん!」

私は買ってきた材料をキッチンへ運び、さっそく料理を始めた。下に妹がいて、よく看病はしてるから、おかゆは作り慣れている。でも、いざ彼氏が食べるとなるといつも作っているとはいえ緊張してしまう。

「…いたっ」

ついぼーっとして、包丁で少し指を切ってしまった。

「だ、大丈夫?!」

のどが渇いたらしくキッチンに来ていた真琴くんが駆けつけてきた。

「ご、ごめん!大丈夫だから!」

そういって私は右手を急いで隠す。

「…隠さないで」

しかし、真琴くんに腕を掴まれそれは阻まれた。そして、切れていることに気が付くと、何も言わずに私の指を口に含んだ。

「まままま、真琴くん?!」

「え、あ、ごめん…!」

しばらくの間沈黙が続いた。

「あ、おかゆもうすぐ出来るから、座って待ってて!」

沈黙を破るように私は真琴くんに席に着くように促した。

「はい、どうぞー」

「ん」

「…へ?」

「…食べさせて」

いつもと違う真琴くんにドギマギしながら私は無言で頷いた。手が…震える。

「そんなに緊張しないで。…うん、おいしい」

そんな幸せそうな顔されたら私…!

「え、ちょ、名前?!大丈夫?!」

看病をさせて
(倒れて逆に看病してもらってどうするの私…)
(細かいことは気にしない)
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