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君の声で呼んで


「そろそろ名前で呼んでくれてもいいんじゃない?」

今日の日直である私は、放課後、葉月くんと日誌を書いていた。そんな時、葉月くんは不意にそんな事を言った。

「僕たち、付き合ってそろそろ半年になるけど、まだ名字呼びだよね?」

僕は名前呼びなのになー、と。ちらりと私を見る。私はあえて気付かないフリをする。

「ちぇーっ」

そう言って葉月くんは、机にうなだれ、自分の前髪をくるくるといじり始める。本当は、私だって名前で呼びたい。ただ、タイミングを逃してここまで来てしまったのだ。

「もしかして…嫌?」

不安そうに葉月くんは私をもう一度見る。

「まさか。本当は私だって名前で呼びたい…」

「じゃあ、呼んで♪」

「うっ…」

普段からあまり人のことを名前呼びにしない私にとって、それはあまりにも難題であった。

「うーん…。あ、そうだっ」

葉月くんは、何かを思い付いたのかぽんっと手を打つ。

「名前ちゃん、こっち向いてっ」

日誌を書いていた私は、日誌から目を離し葉月くんの方を向く…

…ちゅ。

「…って、ななななな渚くん?!///」

「ほら、呼べた♪」

「あっ…」

葉月…な、凪くんはとても満足そうに笑っていた。

「僕ね、君の声が好きなんだ。…だから、君の声で呼んでほしいんだ。僕の名前」

私の手の上に自分の手を軽く重ね、それとさっきのはご褒美、と言って渚くんは微笑む。

「名前1回呼ぶごとに、1ちゅーね?」

そう言って、渚くんはまたキスをする。

君の声で呼んで
(いいいいま、よ、呼んでない…!)
(それは僕がしたかったから♪)


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