○○彼氏 | ナノ
バレバレです
どうしてこんな状況になったんだろう…。今日は上司の向坂さん家に遊びに来ていて。二人で夕飯を作って、食べて。そのあと、テレビを見ていたはずなのに。
「あの…、向坂さん…?」
「なんですか、苗字さん」
「一体全体、どうしてこんな状況になってしまったんですか…!」
「おや、どうしてでしょう」
私は今、会社の上司である向坂さんに後ろから抱き着かれてテレビを見ています。
「か、彼氏でもないのにこういうのは、よ、よくないと思います…!」
「苗字さん、緊張してるんですか?顔が真っ赤ですよ?」
そういって向坂さんは、私の弱い右耳元で囁いた。
「っ…向坂さん…!!悪ふざけは…」
「悪ふざけだなんて、心外ですね。僕は本気ですよ?」
すると今度は、右耳をぱくりと甘噛みした。
「っ〜〜!」
「苗字さんは全く面白い反応をしてくれますね。耳まで真っ赤です」
「もう、向坂さん…!!」
私はとうとうしびれを切らして、後ろを振り返った。
「あらら、怒っちゃいましたか?…でも、やっとこっち見てくれましたね」
「え?」
「今日、僕の家に来てからずっと目、合ってませんよね?」
「あっ…」
向坂さんには気付かれていた。私が目を合わしていなかったこと。
正確には、合わしていなかったのではなく、合わせられなかったのだ。…私が向坂さんを好きだから。
「気づいてないと思ったら、大間違いですよ?せっかく好きな女性が遊びに来てくれると楽しみにしていたのに、いざ来ていただいても全然こっちを見てくれないんですからね」
「…え?」
「ふふふ、驚いた顔も可愛らしいですよ、…名前さん」
向坂さんは満足したような顔で笑い、静かにキスを落とした。
バレバレです
(あなたが私に好意を持っていることも、気付いてますよ?)
(わ、私ってそんなにわかりやすいですかね…)