DREAM うたプリ | ナノ
trick or treat
「トキヤくん! trick or treatですっ!」
私は、合鍵でトキヤくんの家に入り、魔女の仮装をして待機していた。そして、トキヤくんが家の鍵を開けるのと同時にあの言葉を叫んだ。
「なっ…!…なんなんですか、一体」
「今日はハロウィンですよ!」
私は、得意げに持っていた手作り感満載の魔法の杖を振り回した。
「いえ、それは分かるのですが…。なぜ、仮装を」
「折角ですから本格的に、と!」
私は、仮装の所為もあって完全に浮かれていた。
「全くあなたという人は…。ああ!部屋の中までこんなに飾り付けて…!片付けが大変でしょう!」
結局最後は私が片付ける羽目になるのに、とブツブツ文句を言いながらトキヤくんは部屋の中に入る。
「あ、あの…」
「なんです」
トキヤくんは、少し棘のある返事をした。
「…今年の行事は全て、トキヤくんと過ごす初めてのことばかりなので、思い出たくさん作りたくて…。それなのに、トキヤくんに何の相談も無しに色々してしまってごめんなさい…」
「苗字さん…」
「ただ、トキヤくんに楽しんでもらいたくて…。喜んで…もらいたくて…」
言いたいことがまとまらず、最後は語尾が小さくなり、そのまま口を閉じてしまった。すると、突然私の体は強い力に引っ張られ、そのままトキヤくんの胸へダイブした。
「と、トキ…!」
「…すみません。これでも喜んでるの、伝わりませんか?言葉で上手く伝えられずすみません。…ただ、こうすれば分かってもらえるでしょうか?」
そういって、トキヤくんは更に強く私を抱きしめた。
「は、はい…!」
私は嬉しくて、抱きしめ返した。
「あいにく」
そしてトキヤくんは、私の耳元でそう囁く。
「私は今、お菓子を持っていません。さて、そんな私にいたずらしますか?…それとも、されたいですか?」
トキヤくんは、私の腰のあたりをさすりながら囁いてくる。
「す、すみません…!手がっ…!」
「手が、どうかしましたか?」
そして、そのままその手は私の背中をすっと滑らせて、顎にきた。
「どっちが好きですか?魔女さん」
「あ、あの…!」
トキヤくんの目が私を捉えて離さない。
「時間切れです」
その言葉を合図に、トキヤくんは私の唇に噛み付くようなキスをした。
「ふぁっ…んっ…!」
私が一生懸命息をしようと口を離そうとするが、トキヤくんがそれを許さない。
「ほら、舌、出してください」
「へ?」
口が開いたその隙に、トキヤくんは舌を滑り込ませ、絡ませてきた。頭がクラクラして、ぼーっとしてくるほど、濃厚なキス。くちゅくちゅと、舌を絡ませる音だけが部屋に響く。
「…いたずらはこれでおしまいです」
満足したらしいトキヤくんは、ようやく口を離した。
「…涙目のあなた、とてもいやらしいですね」
そういって、目元にキスを落とす。
trick or treat
(魔女さんからのいたずらが楽しみですね)
(き、今日は勘弁してくださいっ)