DREAM 薄桜鬼 | ナノ
二人きり
私の一日は、朝の庭掃除から始まる。庭で掃除をしていると、廊下を通るみんなに挨拶出来るからとてもお気に入りの場所であったりする。
「おはよう、名前!毎日ご苦労様!」
「おはよう、平助くん」
寝癖を直しながら廊下を歩いていく平助くん。今日の寝癖はまだいい方だなあ…。
「おはよう、名前ちゃん。土方さんが呼んでたよ」
「おはようございます、沖田さん。土方さんですね、分かりました」
「いってらっしゃい。名前ちゃん」
沖田さんは私の顔をにやけ顔で見ながら言った。
「な、なんですか!私の顔見て笑うだなんて!」
「土方さんって名前聞くだけで嬉しそうだなあと思ってね」
「っ…!ち、ちがいます!!」
私は今やっていた仕事を一旦中断し、すぐに土方さんのいる部屋へ向かった。
「…土方さん、名前です」
「おう、入れ」
入ると土方さんは、何か書き物をしているところだった。
「お呼びでしょうか?」
「…は?俺は呼んじゃいない。お前が用あってきたんだろ?」
「えぇ?!」
沖田さんに土方さんから呼ばれていると聞いたから来たのに…?
「あの…私、沖田さんに土方さんが私を呼んでるとお聞きしたのですが…!」
「…総司のいたずらだな」
土方さんはひとつ大きなため息をついた。
「名前、せっかく来てもらって悪ぃが、俺は呼んじゃいねぇ…」
「あ、はい、わかりました。それでは、失礼させていただきますね」
「…が、せっかく来たんなら…ゆっくりしていけ」
「は、はい!」
きっと沖田さんは、私が土方さんに好意を寄せているのに気付いて、二人きりにしてくれたのだろう。
「とりあえず、んなとこ突っ立ってねぇで、こっち座れ」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて…」
私は2、3歩歩み寄ってちょこんと座った。な、何を話したらいいんだろう…!
「…今日も庭掃除はしたのか?」
「え、あ、はい!まだ途中ですけど…」
「そいつはすまねぇ」
「いえ!土方さんの所為ではありませんし、大丈夫れす!」
緊張のあまり私は大事なところで噛んでしまった。すると、土方さんは笑い始めた。
「本当お前は見てて飽きねぇな」
土方さんは柔らかい笑顔を私に向けてくれた。やっぱり…かっこいいな。
「お前がここに来てからいろんな奴が、いい意味で変わったよ」
「そ、そうですか…?」
「もちろん、俺もだ。ありがとな」
「お、お礼を言われるだなんて、そんな…!」
好意を寄せている男性からこんな風に褒められたらどうにかなってしまいそうだった。
「俺に…人を愛するという気持ちを教えてくれて…ありがとな」
「…へ?」
「なぁに素っ頓狂な声あげてんだよ」
すると土方さんは私の腰を引き寄せ、顎を持ち上げてきた。
「…俺の…女になってくれねぇか?」
「ず、ずるいです…!」
私は顔を真っ赤にしながら、近づいてくる土方さんの顔を途中まで見届けて、静かに目を閉じた。
二人きり
(私もずっと…好きでした)
(んなこたあ、知ってる)