DREAM 薄桜鬼 | ナノ
もう一度あなたに会えたら
沖田さんが死んだ。2人で、誓った夢を叶える前に、沖田さんは死んでしまった。
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「君を…1人にしてしまう僕を許して」
沖田さんは、悲しそうな顔で私を見つめていた。私は今にも冷たくなってしまいそうな、弱々しい沖田さんの体を抱きかかえながら、その顔をじっと見ることしか出来なかった。
「僕は、いつまでも、君のそばに、いるから…。だから…、君は幸せに…なるんだよ」
命が尽きる最後の最後まで、沖田さんは私の幸せを願っていてくれた。沖田さんは、微笑んでいた。
「…嫌です」
「…え?」
「沖田さんのいない未来なんていりません!!だからっ…!」
「名前ちゃん」
落ち着いてよ、とでも言うかのように、沖田さんは私の言葉を遮った。
「さっき、僕のこと、好きだって言ってくれたよね?」
「……はい」
「あれ、もう一度聞かせて、ほしいな…」
沖田さんの体がだんだん冷たくなってきているのが、嫌でも分かった。
「沖田さん……、好きです。大好きです。いつまでもあなたと一緒にっ……!」
「うん、ありがとう…。僕も君が好きだよ…」
そうして、沖田さんは息を引き取った。沖田さんは最後まで微笑んでいた。
「沖田さぁぁあん!!!!」
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あの日から毎日、私はこの場所へきて花を供えにきている。沖田さんのことを1日だって忘れたことはない。
「沖田さん…、今日も来ました。知っていますか?今日はあの日からちょうど1年経つんです。…早いですね。今日は沖田さんもこの場所へ来てくれると信じて、少しお話しして行きますね」
そう言って私は、近くにある大きな木の幹に腰をかけた。
「…沖田さんが逝ってしまってから、私は心に決して埋まることのない大きな穴が空いたような毎日を過ごしていました。何度もあなたの元へ行こうともしました。…でも、絶対失敗してしまうんです。」
なんででしょうね、と私は肩をすくめた。
「でも、それから私は沖田さんの分まで生きて行こうと、思えるようにまでなってきたんですよ。」
いるはずもない、でも、いると信じてる方向へ私は笑顔で言った。そして、よいしょ、と私は立ち上がる。
「私は……ずっと、ずっと他でもない、沖田さんのものです。1年経っても2年経っても変わりません。…大好きです、沖田さん」
私は持っていた花をいつもの場所へ供えると、手を合わせた。この時だけは、沖田さんと心が通じ合える気がする。
「…それじゃあ、沖田さん。明日からも変わらず毎日来ますね」
すると、突然強い風が吹いて落ち葉が舞った。そして同時に生暖かい風を唇に感じた。その時私は、わけも分からず一粒の涙が頬を伝った。
もう一度あなたに会えたら
(恋に落ちるところから始めませんか)