涙※夏戦争ワビカズ

本家様とは全くの無関係です。















負けた。
初めて。
圧倒的な力を持った敵を目の前に、体が震えて、頭が真っ白になって、気が付いたら、動かない、ボロボロのキングが。


壁が吹き飛んで、風通しのよくなった部屋で、カズマはふるりと、身体を震わせた。

あれから、ケンジと家族総出で力を合わせ、ラブマシーンを倒すことには成功した。
けれど、1度は負けたのだ。自分は、キングは、守れなかった。母を、妹を、家族を。

きゅ、と薄いタオルケットに頭まで包まる。
睫毛が涙で濡れているのがわかる。

怖い。負けることが。守れないことが。
あの時、どれだけ呼びかけても動かないキングが頭から離れない。

とうとう耐え切れずに、涙が頬を伝って落ちた。


「カズマ」

優しく、タオルケットの上から身体を叩かれる。

「カズマ」

「なに、おじさん」

涙声だった。
ぐず、と鼻をすする。

「泣いてんのか」

「泣いてない。何、何か用」

無理やりタオルケットを引かれ、文句を言おうとしたところに、侘助が直に触ってくる。腰を抱き寄せられ、腹の前で侘助の腕が組まれる。

「ほっせーの。子供ってこんな小さかったっけか」

「な、な、な」

「なんだ、やっぱ泣いてんじゃねぇか」

「は、離せよ。何のつもり、暑さで頭沸いたんじゃないの」

「カズマ」

侘助の腕に力がこもる。大人の体だ。華奢なカズマは、すっぽりと侘助の腕の中に包まれてしまう。背中に侘助の胸板を感じて、ぎくりとした。ひょろりとした体つきの侘助だが、密着した今の状態では、無駄な脂肪もなく、均等についた筋肉を嫌でも感じてしまう。自分にはないもの。大人の身体、頭脳、腕力。

「細くて、小さいな。お前ってこんなに小さかったんだな」

耳に、侘助の吐息を感じて、カズマは身体を震わせた。

「こんなよわっちい身体で、お前よく頑張ったな」

「な、に。なんなのおじさん。変だよ、さっきから」

おかしい。いつも飄々とした侘助とは違う。こんな、まるで弱っているような、何かに縋るような侘助をカズマは知らなかった。

「・・・・・悪かった」

「・・・・・・・」

それは、誰に対しての言葉なの。

「俺のせいで、泣かせちまって悪かった」

じわりと、カズマのタンクトップが滲みていく。

「・・・・おじさん」

「ごめん、ごめんな」

「わ、侘助おじさん」

泣いてるのは、あんたの方だ。その言葉を、カズマはぐっと飲み込んだ。
侘助の腕に自分のそれを重ねる。すり、と後頭部をすり寄せる。

寂しいんだ。俺も、この人も。


・・・・・・・・ばぁちゃん。


小さく、侘助の声が響いた。


























朝露に濡れた朝顔が、ゆっくりと、その蕾を開き始めていた。




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