私があったかい部屋にひとりでごろごろしてテレビを見ていても時間っていうのは勝手に過ぎて行く。
今日は大晦日だから部屋も綺麗に片付けた。ご飯もちゃんと出来てるし…ケーキもある。
だけど部屋にいるのは私ひとり。本当ならもうひとり…いるはずなんだけど、彼は今日に限っていない。まぁ彼は大体ふらふらしてるんだけど…今日だけはいて欲しかった。

「ちーちゃんの馬鹿…」

年末だから特番で、普段だったら実家で笑って見ているところだけど…今年は違っていた。
今年は実家に帰らないから、やっと、やっと大好きな彼と一緒に過ごせる。そんな夢みたいな乙女チックな事を考えてはいたけど…もう時間は既に来年に向けてのカウントダウンが始まってしまいそうだ。
年末は一緒にいたかった。だけど…そんな事よりももっと大事な…今日はその彼の誕生日だったりした。だから…だから一緒にいたかったのに…
一応彼の携帯にお誕生日おめでとうってメールをした。伝言も念のため入れてはみたけど…

「…直接、言えないのは、寂しいよやっぱり…」

お腹で潰していたクッションに顔をうずめて誤魔化すように声を上げる。ちーちゃんの馬鹿馬鹿馬鹿。でも…

「寂しいって言えない私が一番、馬鹿」

口にすると悲しさばかりが過ぎる。ホント一言、行くなって言えば良かったのに…馬鹿な私。いっつもそう。何か負担だとか重い女になりたくないからって、出掛けてしまうちーちゃんに何も言えない。いや、ちーちゃんに限らず今までずっと。だから強い女だと言われてた。…本当はただ強がってるだけの、馬鹿な女なのに…

「…俺がいなくて、寂しかったと?」
「…
 え…!?」

ぼやっとしてて、テレビの音も頭に入らなかった私。いつ背後にいたんだか分からなかった。
驚き、だらしなくしていたのを止めて起き上がる。間違いなく、ちーちゃんだ。…私の目がおかしくなければ…

「ちーちゃん…」
「寂しかったと、俺がいなくて?」
「え?」

意味が分からないとぱちぱちと瞬きをすれば、さっきの呟きが漏れていたのを告げられて恥ずかしくなった。最悪、なんて恥ずかしい。

「別に、その…」

そんな事を言うと重いだろうと頭が勝手に働く。だからそういうのが駄目だって頭が動くけど、口が勝手に動くのは止められない。ヤバい頭ぐちゃぐちゃする。…ちーちゃんの顔が見れない…

「…お前は別に俺がおらんでも…よかばいね…」
「え…」

今、なんて?
驚いたというよりはまさかといった気持ちで顔を上げれば、実に悲しそうなちーちゃんの顔が目に入った。あ、これ…まさか…いや…
駄目だ私、これじゃあまた繰り返す。くるりと後ろを向けたちーちゃんの姿が今までの出来事と被る。
駄目、駄目!

「嫌だ、行かないで!
 …寂しかったよ、すっごく。今日じゃなくてもちーちゃんがいない時は…帰って来ない時はいつも…」

今までこんな事を言った事もなければ、こんな事をした事もない。
縋るようにちーちゃんの背中に抱き付き、口から漏らした重たい本音。
みっともないかも知れない。重いって思われるかも知れない。だけどそんな事を…今までの私を捨てられるくらいちーちゃんと離れたくなかった。ぎゅっと服を掴んだ手が震える。顔色を伺うように見上げる私の視線の先は滲んでいた。

「ちーちゃん…」
「…やっと、本音言ってくれたばい…」
「…は…?」

滲んだ視線の先、彼がどんな表情をしているかなんて全く見えない。見えないが、縋るように掴んだ手がそっと離され、逆に私の身体全体が温かいものに包まれた時はただ頭が混乱するばかりだった。
今、どうなってるの、私…?

「…俺も、寂しかったたい…」
「は…い…?」
「俺がどれだけ出掛けても全然そんな素振り見せんかったと。
 …気楽と思う反面、俺んこつ必要じゃなかとも…思うたい…」

え…?
何を言っている、と思い慌てて涙を手で擦り、改めて見上げてみれば今まで見た事ない泣きそうな顔をしたちーちゃん。
ちーちゃん…

「ごめん…そんな事言ったら重い女って思われるかと…」
「そげなこつ…俺は思わんとよ。もっと俺に甘えて欲しか…もっと俺んこつ必要として…欲しか…」
「ちーちゃん…」

どうしよう悲しくないのに涙が出る。
今まで全然甘えて来れなかったのを取り戻すように、ちーちゃんにしがみつくように抱き付けばあやすように頭を撫でてくれた。駄目だ、もう大好きだ私。あ…

「ちーちゃんちーちゃん」
「ん?」
「お誕生日、おめでとう。でもなんか私の方が良い思いしちゃってるね、ちーちゃんのお誕生日なのに…」

ちらりと時計を見たらぎりぎりセーフ。まだちーちゃんに何も誕生日らしい事が出来てないけど、言葉だけは告げたかった。
…ただ、こんなに私が幸せになるのが申し訳ない気もするが…

「そげんこつ心配なかよ。俺も今、お前さんから充分幸せ、貰ったとよ…」
「ちーちゃん…」
「いっちゃん好いとうよ。また来年も…それから再来年も…これからもずっとこうして俺んこつ祝って欲しかよ」

その言葉にまた涙腺が緩くなる。その言葉に私はただこくこく頷くしか出来なかった。
…実はこの時のこれがちーちゃんのプロポーズと気付くのは、もっと後の話。


言葉にならない
(それでも貴方が一番大好きだ)


思い切り年が明けました。明けましておめでとう御座います(^^)
千歳をちーちゃんって呼びたいのは私の願望から。こっそり…ちーちゃんの口調をでらりと忘れたためにモアプリを引っ張り出してやってみたら妙に方言にきゅんと来ました。中学生超越し過ぎた大人っぽさがたまらん(笑)いつか戦国BASARAトリップ連載の長身ヒロインと絡ませたい野望がありますが、絶対あのふたりすれ違う(笑)

取りあえず…お誕生日おめでとうちとせーー!!!

2013.1.1.Tue
kirika@No more

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