暑い日差しが降り注ぐ7月。私が彼と付き合って、もうすぐ3ヶ月経とうとしていた。
付き合って、はいる筈…いる筈なんだけど…例えば彼の部屋という同じ空間にいた所で彼は相変わらず無愛想で、ひたすら自分のパソコンに向かってカチャカチャと…していたりする。無言の空間。嫌かと聞かれれば嫌ではないが。彼…財前君の趣味はパソコンで曲を作る事。まぁ一緒の空間にいてそれを眺められるっていうのは私からしたらいい事だと解釈出来る。
でも…

「財前君って、ホントに私の事好きなの、かな?」

だけどいまいち、付き合ってる感がないようなものを覚える。
日差しを遮るもののない屋上にひとり。だからつい呟いてしまったが口に出すと虚しいなんか。
告白は私からだったせいか好きと告げられた事もなく…まぁこれだけ長く付き合ってくれてるというのは嫌いでないという証拠だろうなとは思うけど。財前君って付き合っても長続きしないみたいだったから。
だけど、改めてこう…私に対する愛のようなものが欲しいとか贅沢だろうか。でも、うん…たまに心配になるんだよね。
あぁ女ってめんど…私女だけど。無い物ねだりって分かってはいるんだけどねー。
そんな事を悶々と考えていれば、あぁそろそろ4時になる。荷物取って来ないと。そう思って教室に向かおうと通り掛かった廊下で聞き慣れた声が耳に入った。

「なぁ、自分らどうなん?財前にしては長く続いとるやん」

声の主は白石。して、財前って、まさか…

「あぁ、先輩との事ですか?確かに、続いとりますね」

抑揚の薄い声色。やっぱりまさかの財前君だ。しかも話題…私達の事じゃん。うわ、どうしよう聞かない方が良いかな…?でもヤバい、つい聞き耳立てたくなる。

「あの子、どうや?」

げ…白石の野郎何を聞くのよ。やだなぁ聞きたくない事返ってきたら…
ただ、やだなぁと思いながらも壁に身体をこそっと預けて結局聞き耳を立てる自分の行動が切ない。
でも、聞きたい、かも知れない…これは、私が聞きたかった事でもあったりするから…
財前君は、私の事どう思ってる?
本当は、そろそろ別れようかなとか、思ってる?
怖いこわいコワイ。
考えてしまうと自然ぎゅっと目を閉じてしまう。身体が強張ったように動かない。
財前、君…

「…先輩と一緒にいると、楽なんすわ」
「楽?」
「最初はやっぱ男やし彼氏やしでえぇかっことかしたかったんやけど先輩あんまりにも自然体過ぎて…結局俺も無理もえぇかっこも出来んくなって。だからか先輩といたら落ち着くんすわ。かといって緊張感ない訳やないんすけど…」
「へぇ…」
「後先輩、俺が作った曲気に入ったらめっちゃかわええ顔して聞いてくれるんすよ。それ見んの楽しみで…」

…嘘…
彼が口にする言葉に私は目を見開いてしまった。
彼は、もしかしたら私に興味がないんじゃないかと思った事もあった。正直、笑った顔とかあんまり見た事ないし…つまんないかなと思ったりもした。言われてみれば曲は良く聞かせてくれたけど…表情ちゃんと見ていたなんて…
私、彼の事をきちんと見ていなかったんだろうな、なんて思う。情けない、形だけの気持ちなんかよりずっと彼は私に気持ちを向けてくれていたというのに…

「財前…今、えぇ顔しとんな」

穏やかに、白石の声が聞こえた。良い顔?なにそれ気になる。

少し覗いてみようかな…?財前君の表情、見てみたい。
こっそり、ホントにこっそりと教室の中に視線を向ける。ちらっとだからきっと気付かれないかなと思うけど…

「…先輩のお陰っすわ…先輩の事考えると俺幸せなんで」
「…ホンマ幸せそうやな、財前」

「…っ…!」

覗いた教室に差し込む夏の日差し。眩しい程の夏の日差しが彼を照らす。爽やかなそれは彼の表情をまた一層の事輝かせる。
最強のプレゼント。嬉し過ぎて涙が滑った。私の事を語っていた財前君の表情は凄くかっこいい、笑顔だったから…

「じゃ俺そろそろ先輩の事迎えに行きます」

財前君が私の所に来る前に、泣いてしまった顔を隠しながら走って教室に戻った。
彼が目の前に来たら飽きる程告げよう、貴方が大好きだと。


7月といえば財前君!
普段あんまり大きい声でそんな事言わない子だけどヒロインの前以外ではここぞとばかりにのろけたり、口よりも表情が気持ちを物語るような子かなと思ったり思わなかったり。
参加させて下さってありがとうございます!

2012.6.10.Sun
kirika@No more
驟雨様提出済み。

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