バニラに限る(ブン太)




不覚よ、不覚。それもまた一生に近い位。
頭が痛い、ついでに身体も痛い、更に言うと寒い猛烈に。しかも布団の重みで節々が痛い。
そう、私は今高熱でぶっ倒れている。
頭には冷えピタ、乾燥防止に付けた加湿器から漂う湿気が何だか心地良い。
あぁどうしてこんな日に倒れちゃったのかしら。
今日から、今日から新婚旅行の筈だったのに…

「ごめんねブンちゃん…旅行、台無しにしちゃって…」
「いいっていいって、気にすんな。今に始まった事じゃねぇだろい。…それより大丈夫か?」

昔となんら変わらない笑顔を私に向ける。
いつもの事だと笑う彼の優しさが嬉しく、そしてそれがこんな時に熱を出してしまった私を余計に落ち込ませた。

「いつもの事だから大丈夫…だけど……ホントごめん…」
「あー、泣くなって。全然気にしてねぇし。俺はお前といれりゃいいんだからよ」
「でも…今日は…」

いつもの事だけど、こんな時にそんないつものがあるとホント泣ける。これで何度ブンちゃんとのデートを駄目にしたんだろう。過去を振り返ってしまうとそんな思い出ばかり頭を過ぎる。
そしてその時はいつもブンちゃんは優しく私のそばにいてくれた。今も勿論…

「だから気にすんなって言ってるだろい?なぁ、プロポーズの言葉覚えてるか?」
「え、プロポーズ?」
「…一生お前を支えてやるって言っただろい?…だからいいんだよ、こうしてるのが」

頭を撫でながら諭すように言われる言葉。確かそうだ、あの時もこうやって頭を撫でて…と、そう言えば…

「私、プロポーズの日も寝込んだんだよね…」

そう、大事なプロポーズの日もこうして熱を出して私は…
考えると何だか涙腺から涙が落ちる。同時にいつもこうして世話をやいてくれるブンちゃんに有り難さを覚えた。

「そうだな。でも、俺はそれでお前と結婚しようって思った。ずっとそばにいたい、ずっと守ってやろうって思ったんだせ…」
「ブンちゃん…」

まだ頭は痛い。そして身体は痛くて寒い。でも冷えピタを剥がし、額に乗るブンちゃんの手は柔らかくてほんのりとした温かみが心地良い。緩く目を閉じると新たな冷えピタが貼られた。

「そうだ、まだ寝るなよ」
「ん、何…?」
「いつもの、持って来るから」

いつもの?…あれ、何だっけ…?
熱のせいか全く頭が回らない。振り返ってもぐるぐると記憶が飛んでは出るとの朦朧した意識。
うつらとすればいつの間にかブンちゃんが横にいた。

「ほら、これだったら熱出ても食べられるって言ってただろい?食えるか?」
「ん…あ、バニラアイス!食べたい食べる!」
「あ、こら起きるな寝てろって!」

そうだ思い出した。
熱が出ると食欲すごい落ちるけど、バニラのアイスだけは食べられて…それを言ったらブンちゃんは毎回お見舞いにこれを持ってきてくれたんだっけ。
ガラスの器によそったアイス。熱の時でも何だかこれを見ると嬉しくなる。
起き上がりたくなる私を押さえ、ブンちゃんがアイスを食べさせてくれる。
…おいっしー…冷たくて最高…
私のそれが表情にでも出てたのか、笑顔でブンちゃんが私を見ている。
口に運ばれるアイスをを満足げに食べ終わるとその皿をブンちゃんが片付けてまた私のそばにいる。
少し寝た方がいいと言われて私は目を閉じた。

きっと目を開ければブンちゃんがいる。
再び額に乗せられた手に安堵し、暫しの眠りに落ちる事にした。


バニラに限る
(バニラから感じる、貴方の優しさ)


ブンちゃんがやたらお世話焼きさんなのが某DVDで分かったのでつい書きたくなったりしたもの。赤也君に対しての行動はあぁお兄ちゃんだなと改めて思いました。ブンちゃん好きやっぱ。

2011.11.20.Sun
kirika@No more
彼と私は家族です。様提出済み。

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