今から君に告白します(一氏)




私の恋というのは、ある意味不毛だと思う。
だって、こんなに酷な事ってある?

「やったで!明日小春とデートやデート!」
「へぇ良かったじゃん。どこ行くの?」
「明日はな…」

こうやって嬉しそうに語るのは横の席にいる一氏。誰が見ても分かる金色君ラヴな人。
それで…私の好きな人。あぁ不毛…ただ叶わないだけの恋ならいざしらず、相手が…ね…うん。もう絶対適わないうん。
でもこうやって私の前で話してくれる笑顔がまた可愛いなとか思える辺り重症だとも思う。金色君と何かあればホントすぐ報告してくれるもん。
でも…最近やっぱり辛い。きっとそれなりに仲の良い友人カテゴリーに入っているであろうからこうして聞けるだろうけど、好きな人の好きな人話程泣けるものなんてないでしょうやっぱり。
最初はもの凄く怖い人だと思ってた。いやほら、凄い睨まれたし死なすとか言われたし。なんで転校早々こんな人が横にいるんだと泣きそうになったよ。
でも、この人言葉がキツいだけで実際行動が優しかった。ネタとかで笑った時とか凄く嬉しそうだったし、忘れ物した時とかもさり気なく貸してくれた。
だから、そんな人好きになって当然だと思うんだよね。私に惚れるなって方が無理だと思う。
だからねぇ…こうして金色君とデートに行くって嬉しそうに話す様を見るのは…うんキツい。一氏がその、好みがそっちだって分かったのも殺人的にキツかったけど…だって望みないんだよ望み。
休み時間中ノロケを聞き、チャイムが鳴れば席が戻る。
退屈な古典の授業。先生の声は最早子守歌にも聞こえてくる。
暇だ暇だと思う私はこっそり横の一氏を盗み見た。頬杖を付いた彼は間違いなく古典なんて聞いていない。ネタでも考えてんのかな?
どうせ気にしないだろうと思ってじっと見てれば彼は私の視線に気付いたらしく、ノートに目線を落として何か書いたものをこっそり渡してきた。

『ジロジロ見んな。死なすど』

む…なんかムカつく。何よ何よ、私の気持ちなんか何も分かってない癖して。見てたのは本当だけどさ…

『一氏なんて見てない。バンダナのゴミを見てた』

でもムカつくからそう返さない。返した内容は実に可愛くなく、先生の目を盗んで回した手紙を見たら彼はそれを真に受けたのかバンダナを払っていた。あーあ、何なんだろホント。結果一氏を眺めるのは止めて私は書きもしないノートに向かう。授業が終わった後、お昼を食べようとお弁当を持ったらさっきの手紙にクレームでも付けようとしたのか。一氏に腕を掴まれた。

「オイお前、ゴミついてんなら何で早よ言わん。ゴミついたまま小春に会うなんて最悪やろ」
「別にゴミのひとつくらいいいじゃん。女の子じゃないんだから」

大体ゴミなんて適当に考えた言い訳だからあるんだかないんだか分かんないし…ぶっちゃけどうでもいい事だ私にとっては。

「アホか。男でも女でも好きな奴の前で身だしなみちゃんとするのは当然やろ。お前には好きな奴もいないんか」

私からしたら本当どうでもいい話題なのに一氏からしたら重要性が高いものだったらしく、答える顔は真顔。見事なる真顔に私は心で盛大にため息を吐いた。
…まただ…また玉砕言葉を。しかも、しかもだ。私に好きな奴の事を聞くときた。なんという鈍感。神すら恐れぬ鈍感っぷりだよ本当に。私の心に太い太い棘が刺さる。好きな人にこんな事聞かれる、なんて…ねぇ…

「いる…けど…望みないんだよねその人」

貴方です貴方。そうはっきり言えればいいんだけど、そんな事言えない。金色君が好きな貴方が私と付き合うなんて夢を四回ひっくり返しても無理なもの。
そう遠回しに告げてみれば一氏がえらい怪訝な顔を私に向けてきた。…なんで…?

「オイ、望みないのはなんでや」
「え…」

それ聞くかな…ホント馬鹿で鈍感だなこの人。
でも、そんなこの人が好きだ馬鹿。

「…だって、その人好きな人いるんだもん。だから…」
「お前、告白とかしたんか?」
「は?…してないよ。出来る訳ない…」
「なんや、告白もせんで最初っから望みないとか騒いでんのか」

なんなんだろ今日のこの人。やたら突っかかるんだけど。離さないから地味に腕痛いし…よく聞いてみよう、会話成り立ってないし。
一氏さんどうしたんだよ…頭打ったか?

「好きも言わんとそないにうじっとしてんな」
「だって振られるの分かってて」
「付き合ってるのかそのふたり?」
「付き合って、ないけど…見てれば…」

止めて、マジ止めて一氏。
やり取りするたびに傷が…深くなっていくんだが…
どうしてこの人は私とこんなやり取りをやってるんだろ。今日の一氏意味分かんない。

「付き合ってないんなら、お前の思い違いかも知れんやろ。女なら玉砕しろ」
「ハァ!?ちょっと玉砕なんてしたくないってば!するくらいだったら告白しないわよ!」

ついムキになるのを止められない。どうして私は好きな人からこんな事言われなきゃいけないんだろう。こんな金色君が好きなのを全開にしている人に私はわざわざ告白しようなんて思えるはずがない。
腕を掴む一氏とそれを見つめる私の体制は変わらず、しかもどうしてこんな真面目な話になったんだかももう分からない。
どうする、私。
固まったままの私達、このままでいる訳にもいかない。
何か、口にしないと。沈黙が怖い。
一氏の馬鹿、本気で。告白したろかチキショウ。
…聞いたら、困る癖に絶対。
ムカついて苛ついて。やけっぱちになってしまいそう。
だけど私のそんな思考は彼の言葉で一瞬にして飛んでしまった。

「告白出来る相手なら告白しやがれ。振られたら俺がもろたる」
「振られたらって!
 え…は…?」


嘘だろオイ。夢かよオイ。
オイオイ神様、誰がそんな言葉を貰うと想像していただろうか。
言われた言葉が衝撃的過ぎて突っ込むのも忘れてぼけっと彼を見ていたら顔を真っ赤にした彼が私から目をそらして小さく呟いた

「察しろアホ。ホンマ死なすど」


今から君に告白します
(私の好きな人は、貴方だ!)


速攻告白した、私がいた。


同年代縛りでしたが何故か一氏さんで書きたかったんだこれ。因みに台詞から書いたので少し無理があるやも知れません。
素敵な企画に二度参加させて頂き有難う御座いました+


2012.3.23.Fri
kirika@No more
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