Temptation in a moon(仁王)
月の光に照らされた貴方は至極綺麗で
月の光に照らされた貴方はいやに艶っぽくて
どうしてかどうしようもなく…
私は…貴方に誘惑されているような感じだった
Temptation in a moon「久し振りですね」
「そうじゃの…お互い用事も重なって二週間は会ってなかったじゃろ。久し振りじゃな」
久し振りに貴方に会った夜。
学校が違う私と貴方は、プチ遠距離恋愛。
だからいつも…会えば久し振りだ。
「二週間、ホントに長かったですよ。もっとゆっくりいっぱい会いたいですけど…」
そうポソリと私が漏らすと、貴方は優しく笑って私を抱き締めてくれた。
いつもの意地悪そうな詐欺師な顔じゃない…柔らかい顔。
「なんじゃ、今夜はいやに正直じゃのぅ…」
「だって…こんなに会わなかったの初めてですもん。つい言っちゃいました」
釣られて私も笑う。
見上げた視線の先にある表情。
はっきりとした色が分かる訳じゃない。
月明りで淡く色が分かる。
整った顔、綺麗な銀髪。
そう言えば、夜に改めて会ったのは初めてだ。
「なんじゃ?そんなに見つめて…
そんな綺麗か…俺は?」
「え…あ、あの…」
図星だった。
確かに月明りで凄く綺麗だったから、見とれていた。
私が答えに困っていると、いつものあの笑顔に戻ってこちんとおでこを当てられた。
「咲良は分かりやすいからのぅ」
「…分かりやすいのは雅治さんの前だけですよ。とっても…綺麗です…」
それは思わず手を伸ばしたくくらい。
暗闇に光るような錯覚を受ける銀の髪。
そう思ったら…思わず触れてしまった。
「あ、すみませんつい…」
「別に気にせんでもいい。好きな女にこんな積極的になられて嬉しくない男なんざおらんよ」
ふっ…とまた笑う。
あぁどうしよう。また心臓が跳ねる。
手を邪険にされないのを良い事に私は髪の毛に触れて、見つめる。
雅治さんはその私の行動を変わらず笑いながら見つめ、背中に手を回して抱き寄せてくれた。
…顔が…近い…
柔らかい色をした瞳。
口許にある黒子。
思わず…魅入ってしまった。
何だか妙な気分。
私、変かもしれない。
どうしたんだろう…
なんて言うか…どうしようもなく…
「ま、雅治さん…あの…」
「ん?なんじゃ?」
「そ、その…」
言えない。はっきりいって言えない。
遠回しに言うのも有りかもしれないが、遠回しな表現が思い付かない。
「ははーん…そういう事か…」
「え?わ、分かったんですかもしかして…」
表情が少し企んだような色を含む。
ば、バレた…の…?
でも、それならそれで都合…良いかもしれない。
「月に感謝せんとな。まさか咲良がそんな事したいと思うなんてな…」
「え…じゃあ…」
一瞬、ホント一瞬だけ…雅治さんからしてくれるのかと甘い考えが過ぎった。
いやムシロそれが適任じゃないかと…
私からなんて恥ずかしすぎる。
「咲良が何をしたいのかは大体読めたんじゃがなぁ…読めたなら、尚更やって貰いたくなってきたのう」
「え…?」
「さ、俺に邪魔されんかったらちゃんとやるつもりじゃったんやろ?」
「む…」
忘れてた、ほんの一瞬だけ。
この人はこういう人だって事を。
駄目だ。こうなったらもう終わり。
私は…月の力もあって誘惑されてもうどうしようもない。
抑えられない止められない。
「雅治さん…あの…」
「…なんじゃ?」
「あの…キス…しても良いですか?」
全部言ってしまったら恥ずかしさの余りに雅治さんの胸に顔を埋める。
こんな事思うなんて自分でも考えなかった。
綺麗だと思って眺めていた。
眺めていたら…どうしてかその唇を…奪いたい衝動に駆られた。
反応はどうなんだろうと少し心配になって視線を上げると、雅治さんの視線とぶつかる。
表情は優しい色。
「全く…ホントに咲良は可愛いな…」
「え、ああああの!」
「構わんぜよ。俺の方はいつでも準備出来とるぜ」
身体が震える。
まだ緊張するから、恐る恐る近寄る。
雅治さんが目を閉じた。
少しずつ私が近付く。
近付くと、妙に熱を感じてくる。
もうすぐ…触れて…しまう…
…
…そっと、私の唇が重なった。
ドキドキした、ホントに。
ちょこっと触れただけだったけど…凄く…凄く…
ほんの少しのキスタイムが終わって瞳を開ける。
開けたら…
「…」
雅治さんの方からキスが返って来た。
私がやったキスと同じように、優しく重ね合わせる。
「実はな、俺ヤバかったんよ」
「え?何がですか?」
「…咲良がキスしたいって俺に近付いてきたろ?…何度俺の方からキスしようと思った事やら…」
言われて真っ赤になるのが分かった。
何が恥ずかしいのか分からないけど、何だか恥ずかしくて。
「愛してるぜよ…」
「私もです…」
まだ少しこそばゆい愛を告げてくれる言葉。
たまに言ってくれるのが更に胸にくる。
「またこういうの期待しとるぜよ」
「え、も、もうやりませんよ!」
「残念じゃのぅ…」
月に誘われて貴方に触れる。
貴方に触れられるのは私だけの特権。
「雅治さん…大好きです…」
「…!
…今の不意打ちは予測出来んかったな…」
月に誘われてまた、私から…キスを落とした。
end...
ドキサバの仁王クリアと居眠りスチルに触発されて書いたもの。ひっそりとお世話になった夢コンにて『月光』のお題があったりでそれに因んだものを書こうかなとかいうのもあったりです。ドキサバ後だからかヒロインちゃんはつぐみちゃんチックになってます。ドキサバ、比嘉中にときめきまくり。比嘉中最高。
2007.1.26.Fri(UP:2007.1.27.Sat)
kirika@Loveberry * Raspberry
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