MY WEATHER(一氏)




「もう!ユウジ君のバカ!」
「俺がバカならお前はアホやな」
「…もう知らない!」
「勝手にせぇや」

…まただ、またやってしまった。バカだ、私。こんなの、私かユウジ君が折れればすぐに済む話なのに。いや、この場合は私か。何でこう、ユウジ君とはこんな下らない口喧嘩ばっかりなんだろうか…?
ユウジ君の家に遊びに来ていたのに思わず飛び出してしまった私。天気予報では雨が降るとあったから見事に雨が降っていた。
手が、冷たい。でもこれは、手が冷たいの?
足取り重く歩いてみたってユウジ君が追い掛けて来ない事くらいは知っている。分かっているのに飛び出してしまうのは、ただユウジ君が私をどう思っているのか確認したいだけだから。酷くて重いね、私。ただ、昨日部活ないのに一緒に帰れなかったからどこいたのって聞いただけなのに。でもこの私の好奇は重い。知ってる。こんな事、よくある話なのに何度も聞いちゃってるから。

「オイ」
「…」

…やだなもう…幻聴が聞こえるんだけど。

「オイ」
「…」

神様、これは貴方が仕掛けた罠?ユウジ君が追い掛けてくる夢を見させて…

「返事くらいせぇや!」
「!
 …ユウジ、君…」

…夢じゃなかった。
後ろから追い掛けてきたのはユウジ君。
嘘、なんで?今まで一度も追い掛けてくれた事なかったのにどうして?
驚き過ぎて動けなくなった私はただぽかんとユウジ君を見つめているだけだった。

「どう、して…?」

自分でも分かる間の抜けた声。状況的に追い掛けてきてくれたのは分かるけど、今までそんな事なかったから色々追い付かない。

「悪かった」
「?…何が?」
「お前ん事、分かってやれんくて」

どういう事か全く分からない。この悪かったと私の事が分からなかったのと何か関係があるんだろうか?

「彼女出来たん初めてなんや。せやから…何すればお前が悲しくなるかとかこうなったらどうしたらえぇんかとか全然分からへん。やから…」
「ユウジ君…」
「…っ!」

嬉しかった。ユウジ君の不器用さとか、私に対する気持ちみたいなのとか…とにかくいっぱいいっぱい嬉しかった。
困ったように眉を寄せて私から顔をそらしたりするのは彼の戸惑いだって知ってる。
大好き、有難う私の事で考えててくれて。
そう思ったら何だか幸せになってついユウジ君に抱きついてしまった。そんな私の行動に戸惑っているんだろう。見上げた彼の固まった表情がまた愛しかった。
外はまだ雨。抱きついた事で傘は手から離れてしまったので柔らかい雫が頬に触れる。ぎこちないながらもユウジ君が抱きしめ返してくれたので私は彼を目を合わせるように見上げた。

「ユウジ君大好き」
「お、おん…」
「ずっと一緒に、いて」
「おん」
「とにかく…大好き」

戸惑うばかりのユウジ君にまくし立てるように言葉を紡ぎ、じっと彼を見る。
ぎこちない返事ばかりだったが、そらしたユウジ君の耳が真っ赤だったからまた嬉しくなった。
閉じた傘と繋いだ手。肩がぶつかるくらい近付いたまま、ふたりでユウジ君の家に戻した。

外は、雨上がりだった。


桐花さんの中での殿堂入りメンズ中丸君のソロ曲で一番好きな曲をイメージして書いたものです^^中丸君の曲は可愛くて何だか青春な恋愛模様を歌っているのが多くて好き^^

拍手ありがとうございました!

2012.5.22〜


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