Boy&Girl(ブン太)




彼氏のお部屋で他愛ない事を喋り、甘いお菓子を食べて過ごしていた放課後デート、まったりタイム。人懐っこい笑顔がまだまだ少年っぽくて可愛くて…ただこんな事言ったら丸井君に怒られちゃう。男だから可愛いなんて言われても困る、だって。可愛いのに。
そんな空気がふ、と動く。そうなれば丸井君のお喋りも止まり、お菓子を食べるのも止める。
丸井君の手のひらが私の腕にそっと触れる。テニスをしている彼の指は見た目とは違ってごつごつとしていて、しっかりと男の子。そんな腕がゆっくりと私を引き寄せる。この時の丸井君の顔は男の顔。普段は無邪気に可愛いのに男の顔まであるなんて、反則。
そんな丸井君の顔が近付くにちれ、どきん、どきんと心臓が高鳴る。でもこの高揚感は嫌いじゃない。むしろ、好き。
近付く丸井君の顔、ゆるりと目を閉じる。これは、キスの合図。私もゆっくり目を閉じた。
吐息が近い、触れるまで後少…

「はっくしょ!」
「…!」

恋人同士の甘い甘いひと時…だった筈だった。
そういえば今日は晴れてるし気温高いし風も強い。花粉が飛ぶには絶好の条件だ。だからって花粉対策を全くしていなかった訳ではない。
なのに、なのに…
その後もしたくもないくしゃみ三連続。恐る恐る目を空ければ…あぁやっぱり、呆気に取られて目を丸くした丸井君がいた。

「ごめ、ごめん…はっくし!私、花粉症で…っくし!」

薬をしっかり飲んだ筈なのに止まらない。今日のは相当酷いようだ。最低こんな時に。喋りながらでくしゃみが全く止まらない。鼻はぐずぐずだし、ヤバい目が…

「大丈夫か?」
「うん、大丈夫…」

ぐずぐずな私に渡される箱ティッシュ。最悪、良い雰囲気ぶち壊しじゃない。
春この時期はしょっちゅうティッシュのお世話になる私は丸井君にお礼を言ってから鼻をかんだ。あぁスッキリ。涙も出るからそれも拭う。もう最悪。見事に化粧も落ちた。ファンデばっちりティッシュに付いてたもん。

「ありがと丸井君。
 …?」

やっと落ち着いた私は渡された箱ティッシュを丸井君に返した。
…のだが…あれ?

「どうしたの、丸井君?」

何があったんだろう?メッチャ笑ってる。しかもツボにハマってくれたようで大爆笑の域に達している。大体今、そんなに面白い事、あった?

「や、悪ぃ悪ぃ。あんな勢いよく鼻かまれると思ってなくてよぃ」

鼻…?あーー、私の馬鹿ーー!!
そうだよ余りにも普通に人前で鼻かんでたもんだから全然気にしなかったけど、私さっき彼氏の前で思い切り鼻をかみ、挙げ句の果てにちょっと鼻の中ティッシュ越しとはいえぐりぐりしちゃったじゃない!
もう最悪…思い出したら顔が熱くなる。ホント最悪。丸井君から目を背けたい。いや、背けさせて…

「悪かった、こっち向けよ」
「嫌です恥ずかし過ぎてもう泣きそうなのですが…」
「別に嫌いになんかなんねぇよ。そこまで気ぃ使わなくても良いくらい寛いでくれてんのもまた嬉しいもんだぜぃ?」

恥ずかし過ぎて丸井君の顔が見れなくなった私を振り向かせようとしているのだろう。肩に彼の手が乗り、指が私の顎のラインをなぞる。さっきの言葉もありもう振り向きたくなった私は駄目だ、丸井君に勝てそうにない。
まだまだ恥ずかしさがいっぱい残りはしているものの、ゆっくり振り向けば可愛いと一言呟いた丸井君が軽く唇を重ねてくれた。


職場の方が花粉症でしんどそうにしているのを見てなんとなく書いたもの。鼻をかむ姿すら可愛いと言って貰いたい現実逃避願望(笑)

拍手有難う御座いました!

2012.4.12〜


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