00'00'16〜sixteen seconds〜(財前)




携帯の伝言の時間16秒ギリギリその言葉は入っていた。ただ、異様に片付き過ぎた部屋に予感はあったといえば今更やったかも知れんけど。

『別れ、よ』

実際涙で掠れた声はそんなはっきり聞こえず、何度か聞き返した。いや、先輩の声ならどんな声やって聞き取れる。聞けんかったのは、認めたくない俺の心。
もっとそばにいてやれば良かった、と今更思た。先輩に甘え過ぎていたんやと思た。
でももう遅い。今になってすれ違っていた心に気付いて、今になって切なくなった。
外は夕立。道路に当たる雨の音は先輩の言葉を消してまう。
戻れるなら、もう一度、すれ違う前…光と笑顔で呼んでくれたあの日に戻りたい。

「先輩…」

人はこうして出会い、そして別れていく。だからこれは通過するもの。だから、きっとこの痛いのは、今だけ。
先輩がいなくなって空に等しい部屋。涙が伝うのはきっと俺の気のせい。消せない痛みなんて、ないんや…から…
せやけど、先輩がいないこの部屋はいやに広くてそれがまた嫌になる。壁に寄っかかったままずるずると床に落ちていった。持ち上がらない、俺ん身体は鉛のように重い。涙があふれ過ぎてうっとい。

「先輩…っ…先輩…」

ありがとう、こうして伝えられる今ならば。でももっと伝えてやれば良かったと思う。今更。本当に、今更。泣いている自分はアホみたいで笑えてくる。携帯を握り締めて何度も先輩の掠れた声を聞いている自分が情けない。

せやけど、今夜だけは後悔させたって、下さい。
明日からは、先輩がいなくても笑て行きます、から…


亀梨君の『00'00'16』がなんか無性に聞きたくなって聞いたらこうなった。よく思えばなんという歌詞だろうと思う。亀梨君かっこいいどころじゃないよ!

2012.1.22〜


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