やっと慣れた土地から引っ越してきた場所、それは私にとって異国の地に等しくて、むしろはっきり外国に来たといっても良いと思う。
…何で、この学校はこんなに賑やかなんだろう。

「…」

飛び交う関西弁、どこを見てもノリやツッコミが絶えない。大阪の学校は皆そうなのか?私が前にいた学校とあまりに違い過ぎる。でも、さすがにこれはないだろう。いくら大阪だからってベタ過ぎる。ならこれは絶対、四天宝寺がおかしい間違い無い。
そして私は、こんなノリは苦手むしろ嫌いだ。頼むから静かに平和に過ごさせて欲しい。
だからか授業も休み時間も全然ついていない。それよりかまず私は明らかに浮いているだろう。きつい、色んな意味で。
このノリから唯一逃げる事が出来るのは、お昼ご飯を食べる時くらいだった。この時間なら教室もとい校舎から長い時間離れられる。

「…今日どこでご飯食べよう…」

昨日は中庭でご飯を食べていたらライヴの練習だとか訳が分からないものと遭遇して全然ゆっくりご飯が食べられなかった。だから中庭はパス。でも、どうしようか…?
お弁当の袋を持ってウロウロと探してみるものの、そもそも大してこの新しい学校に興味たるものが湧かない私はいまだに何がどこにあるのか全く分からない。はっきりいうと軽く迷う自信もある。しかもあっち見てもこっち見ても人、人、人…
…何なんだよこの学校は…意味が分からない。
しかし早く食べないと昼休みが終わる。そんな時、私はやっと落ち着けそうなものを視線に入れる事が出来た。

「…あれ…裏山…?」

そう、学校の裏の方に回ってみて目に入ったものは、間違い無く山。何だよもっと早く気付けば良かった。
しかし油断のようなものはまだ禁物だ。何せこのお笑い養成学校に等しいこの学校なのだからいつどんなところに何が潜んでいるか分からない。
きょろきょろと周りを見ながらそこに踏み入れてみる。すれば自然と消えていく賑わい。
…これならきっと、大丈夫だろううん。やっと見つけた安息の地にある程度奥に進んで座る。
あぁ、あんなに学校は騒がしかったのにここは嘘のように平和だ。

正直親の都合で大阪に転校する事になり、家から一番近い学校だしと別段入る学校に拘りなんてないからここ四天宝寺を選んだものの、たった一年だけ通うとはいえもう少し真面目に学校を選べば良かったと後悔した。お笑い?中学校なのに?あれ、中学校って義務教育でしょ?ならこんなのふざけているとしか言いようがない。

…早く、卒業したい…

息を吐いたところで何かが変わる訳ではないけど、何だか吐き出したくなってしまった。ため息は幸せが逃げるなんていうけど、正直こんなくらいで逃げる幸せなんかどうでもいい。
と、こんな事してる場合じゃない。早くお弁当食べないと。もたもたしてたから時間あんまりないし…

「誰かいると?」
「…え…?」

やっと手に入れた安息の地。やっとゆっくりお昼が食べられると思った矢先、急に声が掛かった。その事実に驚いた私の口は実に間の抜けた声を出してしまっていた。多分私はこの時、思い切り油断していたんだと思う。あまりに静かだったから、誰もいないと勝手に思い込んでいたんだと思う。だから気付かなかったんだろう、この場所にいたかこの場所に近づいているかしていた人物に…最悪だ。

―そんな私の無駄な葛藤なんて絶対知らずに視界に入ったもの。それは随分大きい、男の人だった。


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