どうしたいか分からないけれどどうにも出来ない。

「最近雨ばっかり…」

そう、結局行動出来ていない。あの人との繋がりは唯一お昼に裏山で一緒になる程度。だから雨になると結局私は教室に留まってお昼を食べていた。
不思議なものであれだけ賑やかで逃げたいと思っていた教室も何日かすれば賑わいの中にいるのも気にならなくなる。慣れって怖い。結局そうなんだよね。気にする気にしないは自分次第で…そして慣れていけばまた、私はこの中に溶けて消えていく。消えて、いく。
とすれば、この妙なもやもやも何日かしたら消えていくんだろうか。結局のところ、関わらなければ人なんてすぐに離れていってしまうんだから。

「若紫さん最近お昼教室にいる事多いな」

今日も今日とて教室でお昼。考え事をしながらなので周りなんて全然目に入る事なんてないし昼休みの賑やかも耳に入らない。そんなもさっとしていた私に声を掛けたのはやっぱりではないがお世話焼き白石さん。白石さんは同じ部活の忍足さんとご飯を食べてたらしく、声の方を向いたら忍足さんまで私の方を見ていた。

「そやな。若紫さんお昼んなるとすぐ教室から出てくもんな!」

まぁ最近教室にいるのは天気が雨だからだが。
明らかなお人好しオーラが滲み出ているふたりを無視も出来ないので…いやそもそも無視とかは流石に感じ悪いからしないけど、そっちの方に身体も少し向けるとまぁ人の良さそうな笑顔ふたつが私に向けられた。

「…最近雨なので…」
「若紫さんって外でお昼食べてるん?」
「えぇ…はい…」
「なんかめんどいな。白石、若紫さんの机もこっちにくっつけたらえぇんちゃう?そしたら食べながら話出来るっちゅー話や!」
「そやな。若紫さんさえ嫌やなければ今日は俺らと昼一緒せえへん?」

雨で外は暗いのに、この空間だけ妙に明るく感じてしまったのはきっと気のせいじゃない。断ろうかと思ったけど、この人達から感じられるのが純粋な親切なので断るのも妙な感じがした。私が小さく頷くと忍足さんは手際良く机をくっつけた。正直こんなの久し振り過ぎて慣れない。なんだろう、違う意味で緊張する。
でもこうなると、怖い気持ちが少し生まれてきた。何がと聞かれても具体的なものは説明出来ないが、妙に身体が強張る。

「あー、何かやっと若紫さんと話出来たわ」
「…意味が分からないのですが…?」

まだ食べ掛けていたお弁当を広げ直して食べ始めると、しみじみしたように白石さんが言ってきた。それに呼応するように忍足さんも頷く。ただ少し考えれば分かった気がした。

「やって若紫さんめっちゃ警戒してたし」

軽く笑いながら言ってくる忍足さんに嫌みは感じない。すと、と落ちていく。悪くない、とすら思う。
でも、こんな空間は心地良いように思えて私からしたら心地良くない。
未来が見えているのに、こういう場所に触れてしまうのは私には愚かな事だとも思う。だけど…

白石さんや忍足さんは根っこの人柄が良いんだ絶対。だからこんな風に親切を向けられるとそれが自然に入る。あの人とは全然違う意味で、こうして人の心を開けてくる。

―じゃああの人は、何?

親切が私に向く訳でもない。でも、穏やかにそっと触れてくるものに拒む事は覚えていない。
あの人を見ていると、まるで子供のようにも思えた。好奇心丸出しの子供。あんなに身長高くて大きいのに。
不思議だ。

「でも良かったわ。正直隣りの席やからって急にお昼とか意味分からへんわーなんて断られるかと思ってたんや」
「あー確かに。若紫さん寄りがたい雰囲気とかあったしな。ま、話してみればそうでもないっちゅー話やけどな、白石」
「そやな。若紫さんの事知れたし…」

目の前で話しているふたりは眩しい。不思議だ、この人達と話していると…私も手を伸ばしたくなってみる。どうしてなんだろう。もうそういうの、いいやって思ってたのに…

だからか唇が滑らかに動く気がする。何だろう、この感覚。他の学校にいるのとは違う。
でも…触れてしまって良いんだろうか?だって触れてもどうせ忘れてしまう、ただの人生の一部分。
それなのに、私は何がしたいんだろうか。

「…私、中学卒業したら…大阪から帰るんですよ、ね…」

何、こんな事口にしてるんだろう。こんなの口にして、何が変わる?
でも…一時とはいえ、これを今無くすのも惜しくて…

「え、そうなん!?あかんやん若紫さん!だったらもっと四天宝寺楽しまなあかんやろ!」
「いや謙也…別に四天宝寺やなくても…
 でもな若紫さん、時間決まっとるんなら楽しく過ごさな損やで。したい事、あるん?」

したい、事…?私が、したい事…?

でも、期限付きならば…止めた方がいいんじゃないかとも思う。
だけど…

―私が、したい事…

それを聞いて、頭に浮かんだのは…


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