「ノーマルですか、バイですか、ゲイですか」

「…わぁお、元宮くんいいねぇ」

「ノーマルってぇ?ポケ○ンのはなし?」

「…。」

なんだよこの状況。

イラつく位ニヤニヤした新崎に、いつものようにアホ丸出しの玲。

極めつけに、真顔でとんでもない質問を投げてきたこいつ、元宮黒羽。

先ほどの新崎のおかしな発言のせいだ。絶対。

「はい、草壁答えて〜」

「草壁さん、ポケモ○好きなら今度俺カセット持ってくるよ〜!」

誰か玲に教えてやれ…いや、玲は知らんでいい。
急かす新崎に、苛立ちながらも俺は良いことを思いついた。
こればかりは玲に感謝だな。

「俺は…………………こ、こおりタイプだ」

「そうなんだ!こおりタイプって草壁さんっぽいかもぉ!」

「ははは」

鋭い視線が突き刺さるが気にしない。




「次俺の質問っ!えと、草壁さんの好きな人のタイプどんな人ですか?あっ、ポ○モンとかじゃなくって、性格とかの事です!」

隣から「俺もそう言えば良かったのか、」とつぶやく声が聞こえるが無視しておこう。

好きな人のタイプなんてこと聞かれたのいつぶりだろうか。
入社当時はよく聞かれていた様な気がするが、適当にかわしていたら全く聞かれなくなったな。

「とりあえず、馬鹿は嫌だな。一緒にいて疲れる。あとは、料理とか生活能力がちゃんとあるやつがいいな」

「お〜、真面目に答えるねぇ。てか料理とか玲くんじゃない?良かったね〜」

「はっはい…ありがとぅございました…」

なんかいつにも増してぽやぱやしてるな。
大丈夫か?






「新崎さんにはさっきもしたけど一応するね!荻窪玲です!草壁さんのお隣に住んでますっ、特技は料理で、苦手な事はお留守番です!」

「かわいいかわいい」

新崎のやつ、さっきからだらけた顔してやがる。
玲は玲でほんのり顔を赤くしていて、なんだか…

ガッ!

「った!!!」

座卓のしたにあぐらをかいていた脛を何者かに思いっきり蹴られた。

衝撃のきた方に顔を向けると変わらず仏頂面をした元宮黒羽がいた。

「おい、なんなんだよ」

玲達に聞こえないよう元宮に告げると、見下したような顔をされた。

「玲で変な事考えないでくれますか。あんたみたいな大人が一番嫌いです」

「は?」

思わず、低い声を出してしまった。
不穏な空気を感じとったのか玲が不安そうな顔でこちらを見ている。

するとそれに気づいた元宮の目が見下したような目から一変、優しそうな目になった。

「なんでもない、次俺が自己紹介するのかって話してだけ。」

そして、柔らかい声。

なんだこいつ、随分と態度違うじゃねぇかよ。
安心したかの様に笑顔になる玲にも何故か苛立ちがわいた。

「元宮黒羽です。玲の幼馴染で、好きなものは玲の料理です。」

最後の方俺を見ながら言いやがった。なんだこいつ、腹立つ。

「元宮くんか〜!イケメンだけど彼女とかいないの?」

「いません。…玲がいるから。」

「!?」

元宮の発言に例のごとく玲は嬉しそうに顔を綻ばせた。

…もしかして、2人って付き合ってんのか?
いやいや、男同士だし、新崎が変な事言うから俺まで思考がおかしくなったか。

でも、付き合ってんならこいつの態度もわかる。
そりゃ恋人が毎日他の男の家に足しげく通ってるなんて知ったら誰だって恨むなりなんなりするだろ。

それが本当だったらこいつクールな顔してやがるけど身の内は嫉妬でいっぱいなのか。
いい気味だぜ。(我ながら性格悪い)

「玲くんは?恋人とかいない?」

俺がそんな事を考えているうちに目の前では会話が飛び交っていた。

「俺はいないですね〜いなくっても毎日楽しいし、今は草壁さんに毎日会うから、幸せなのです。」

エヘヘと照れる玲。
男にでも好かれてるってのは嬉しいもので、自然と顔が力が抜けるのがわかった。
…隣から舌打ち聞こえたけど。


玲にちょっかいを出したりする新崎をしばらく眺めていたら思い出した様に腹が減りはじめた。

「とりあえず、飯にしよう。玲、用意出来るか?」

「はいっ!じゃあ、今から用意するのでっちょっと待ってて下さいね!」

そう言ってパタパタと台所へ入っていく玲を視線で見送る。

ん?あれ、これってもしかして…

「じゃあ、用意出来るまで、男3人でじっくり話しましょうか!!」

こうなるよな…
さっきまでは玲いたからなんとなく場の空気は柔らかかったが、いなくなってしまった今、殺伐とした空気になってしまっている。

「お二人は同じ会社なんですよね。お給料どの位もらってるんですか?」

「は?」

「あははは!元宮くんおもしろいね!!俺達一応普通のサラリーマンだから平均ぐらいは貰っているかな。あ、でも草壁は部長だからな〜」

「部長?」

元宮が訝しげな顔でこちらを見る。

「まぁな、」

新崎の言うとおり、ひらの社員よりは数万高い。

「ふぅん。じゃあなんでこんなボロいアパートに住んでるんですか?もっと良いところ住めるでしょう」

「あ〜、俺もそれ気になってたかも」

「そんなん貯金してるからに決まってんだろ」

俺には未来設計がある。
本当に愛すべき人が現れたら、格好悪くたっていい、絶対に手に入れる。そしたら貯めたお金で一軒家を買って、その人を幸せにする。

そのために俺は入社以来、給料の三分の一を貯金してきている。

そう2人に言うと、

「おまっ、惚れるわ〜」

「ッチ」

間反対の反応が返ってきた。
本当なんなんだこいつら。

「そんな考えがあるならさっさとそこらの女と結婚でもして下さい。玲なんかにかまっていないで」

「なんでそこに玲が出てくんだよ。どうせあと数日で約束の一週間は過ぎるんだ。それまでだろ」

自分で言ってふと、思った。そうか、あと数日か。と

「はっ、どうでしょうかね」

この一週間が終わったって、所詮お隣さんだ。案外玲は俺のことを好いてくれているみたいだし、会いにきそうな気配もある。

この状況を楽しんでいる自分がいるのに気付いた。
終わりが近づいるのにも気付いた。




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