ゴールデンタイム | ナノ

介抱と衝撃の事実

さて、どうしようか。

今僕の目の前にいるのは、全校生徒の憧れ、鳳会長。ただし、今意識はないと思われる。

「どうしたら…」

何故こんなことになっているのかと言うと。全ては親友で放送委員長の遊洛泰盛のせいと言っても過言ではない。いや、あいつのせい!

今日は委員会会議があっていつも通り行ったんだけど、そこでとんでもない事を聞いてしまったのだ。なんでも僕のCDがあるという…。

おかしいと思ってはいた。少し前、泰盛がやたら僕の部屋に来ていると思ったら、『おやすみって言え』とか、『おかえりなさいって言え』とか。あれは録音していたんだろう。なんてことだ。

なんだか疲れたから今日は早めに寝ようと廊下をしげしげと歩いていたらこれだ。泰盛が倒れた、と無瀬くんから連絡が来たから職員室に行ったら泰盛ではなく鳳会長が倒れていたのだ。

この人がよく倒れるというのはかなり有名な話で、急に倒れるもんだから親衛隊も困っていると聞いたことがある。

しかも泰盛は無瀬くんと帰ってしまうし、気を失った会長と2人。はぁ。

(とりあえず、ここから出た方がいいかな)

職員室の一角のソファを生徒が陣取っているというのは改めて見てもおかしい。

「よいしょっと」

会長をおんぶ…。あまり人に会いたい格好ではないな。さっさと寮にでも送り届けよう。

「失礼しました。」



もう6時を過ぎているし、早く帰って夕飯は適当に作って寝よう。
にしても重い。10cmくらい僕より大きいのもあるが、筋肉だろう。男の僕から見てもとても綺麗な体つきをしている。無駄がない。
それに比べて僕はお腹こそ薄ーく割れてはいるが脚などは女の子みたいとよく言われる。毛も薄いし…。

「羨ましいなぁ」
ポツリと誰もいない廊下でつぶやく。すると背中にのった会長が身じろぎした。足を止めて後ろを伺ってみると意識が戻ったらしい。
でもまだぼんやりしていて、半分覚醒していない。

「か、会長?」

声をかけてみるが反応が無い。大丈夫だろうか…

「部屋まで送りますね。鍵貸してくれますか?」

ポケットに手を突っ込み鍵もといカードキーを出す。それを受け取ると会長はまた目を閉じてしまった。





カードキーでドアのロックを外す。
小声でお邪魔しますと言って中に足を踏み入れると、シンプルな家具、どれも最初から部屋に置かれているもので、他の人達は自分の好きな家具に変えているというのに会長はそうゆうことをしない人なのか、と以外に思う。

間取りは僕の部屋と同じだし、ここが寝室。
さっさと寝かして帰ろう。親衛隊にでも会長の部屋から出るとこを見られたら大変だ。

「失礼します。」

かちゃりとドアノブを回す。
足を踏み入れ、ベッドに向かう。

とさりと会長をベッドに倒す。

「はぁ。…ん?」

ベッドサイドに置かれた数枚のCD。その奥には高そうなコンポ。

会長ってどんな音楽聴くんだろう。ちょっと気になるな…

なにも書かれていないCDを取り出しコンポにセットする。
コンポがCDを読み込んだ音がして、さて流れると思い耳をすますと、聞こえて来たのは、想像を絶するものだった。

『おはよう、早くしないと学校遅れるよ』


『また、菓子パン?体に悪いってば』

背中に嫌な汗が伝う。

『ねぇ、これどうやって解くかわかる?』

『あともうちょっとだよ、頑張って!ほら!』

『おかえ「わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


なんだこれなんだこれなんだこれ!
いや、僕はこれを知っている。今聞こえたのは間違いなく僕の声で、親友である泰盛に言ったものだ!

こんな日常会話も録音していたなんて聞いていない!聞きたくも無いけど!!

もしかしなくてもこれが沢本くんが言っていた『霧ヶ峰優也と一緒〜おはようからおやすみまで〜』だ!!!!!!

でもなんで会長がこんなものを…?

「んっ…、あれ…」

後ろで会長の声が聞こえる。さっき僕が叫んだから起きちゃったのか。いや、今はそれどころではない!

「あの!会長!これどうしたんですか!?」

会長に詰め寄る。すると会長は驚いたように目を見開いた。

「その声…もしかして、霧ヶ峰優也か?…」

「はい!!」

マジかとつぶやく会長。どうかしたのだろうか。

「ほ、本物だ…俺の癒し…!」

「へ?い、癒し?ってわぁ!!」

会長はよくわからないことを叫ぶと抱きついて来た。そのせいでバランスを崩しベッドへダイブ。

これってなんだか会長が僕を押し倒してる風…?

「仕事で疲れて倒れそうな俺に遊洛がCDをくれたんだ。それがお前のCDだった。聞いた途端体が熱くなって、元気が出たんだ。それからずっと疲れたらこのCDを聞いている。お前の声が好きだ。」

そうまくし立てると顔を近づけてくる会長。

え、ちょっとまってもしかしてキー…

「んっ、ちょっ」

ついばむように口付けて、たまに下唇を甘噛みされて、

「んんっ…ふ…ゃ」

頭溶けそう…
口を合わせているだけなのにこんな気分になってしまうなんて。

酸欠になりそうで上にいる会長のシャツを掴む。

「かいちょっ…はっ…」

会長の口が離れた。息が上がってしまって、胸が上下する。

「CDじゃあ足りない。もっとお前の声が聴きたい。」

「で、でも…」

「大ファンなんだ。友人としてでもいい、たまにこうやって部屋に来て話がしたい。それだけで疲れが吹っ飛ぶ」

イケメンに見下ろされながらこんな事言われて、断れるわけ

「は、はい」

ーない。

かくして、会長とは携帯の番号も交換し晴れてお友達となったのだが。

なぜキスされたんだと考えた結果、僕は会長は疲れるとキス魔になるんだ、ということで解決した。

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